第6話 F

 7月12日(日)

 騎士沢警察署刑事課長、杉谷聖子は久我殺しに頭を悩ませていた。

 家に帰って『笑点』を見たい。 

 刑事部屋は程よくクーラーが効いている。

 主任の相馬達也が大きなあくびをした。

「相馬君、昨日休みだったよね?」

「ええ、ミュージックフェアを見ました。『TUBE』が出てましたよ」

「夏らしいね?司会は仲間由紀恵だけどさ、土曜の夜ってごくせんやってない?」

「あ〜そんな時間まで起きてないっす」

 そんな中、新たな事件が起きた。


 騎士沢市生まれの美女・千葉月子は巨額の遺産相続人となった。月子は旧知の親友、手賀沼敏子から相談を受ける。敏子の婚約者である永野仁太郎が失業し、生活に苦しんでいるため、手を貸してほしいとの要望だった。

 月子は永野と会うが、その直後に彼女は永野との電撃結婚を発表する。いわば略奪婚だった。


 いまや若き富豪となった夫妻は、新婚旅行で沖縄に赴く(コロナのおかげで安いプランだった。)が、行く手に敏子が姿を現した。

 敏子は夫妻と同じ豪華客船に乗り合わせ、ことあるごとに暴言を浴びせるなど妨害行為を繰り返す。

「この泥棒ネコ!」「死んで詫びろ!」

 月子は船の乗客に、旅行中の名探偵、沼津寧々がいることを知り、「敏子を遠ざけてほしい」と頼む。だが寧々は依頼を受けなかった。

「旅行中なので……」


 一夜が明けた朝、月子は銃殺されていた。Tの血文字が残されていたことから、敏子が真っ先に疑われたが、彼女にはアリバイがあった。そして船内には、他にも怪しむべき人々がひしめきあっていた。


 月子の叔父で財産の管理者でもある野上春夫、月子を彷彿とさせる登場人物をネタに小説を執筆した作家・東山史也、東山の娘で月子に嫉妬心を抱くヘラ、月子の真珠のネックレスを欲しがる星沢誠也、月子に藪医者呼ばわりされた医師の三浦睦月。いずれも月子と揉め事を起こしていた。


 さらには、メイドの目黒桃香は月子に自身の結婚を破談されたと信じているし、介護士の安永悠介は月子の祖父に解雇させられていて、社会主義シンパの学生、横塚蘭はそもそもブルジョア階級を憎悪していた。


 寧々から電話を受けた聖子は遠く離れた騎士沢署で推理を開始する。寧々からの情報によれば月子は胸を銃で撃たれて死んだそうだ。つまり、犯人は真正面から月子を撃った。月子は甲板で死んでいた。甲板の外は海、逃げ場がない。犯人が呼び出したのか?それとも景色を見てるところを襲われたのか?

  

 セルシュも豪華客船に乗り込んでいた。

 事件関係者をメモ帳に記録した。

 💀チバ・ツキコ 騎士沢市出身

  テガヌマ・トシコ ツキコに婚約者略奪

  ナガノ・ニンタロウ トシコの元婚約者

  ヌマヅ・ネネ 私立探偵・横浜市在住 

  ノガミ・ハルオ ツキコのオジ

  ヒガシヤマ・フミヤ 小説家

  ヒガシヤマ・ヘラ フミヤの娘・大学生

  ホシザワ・マサヤ 顔が気持ち悪い

  ミウラ・ムツキ 聖天病院・産婦人科医

  メグロ・モモカ メイド・結婚破談

  ヤスナガ・ユウスケ 介護士

  ヨコツカ・ラン 東亜大学・4年生

  チバ・リュウゾウ 老人ホーム施設長

  スギタニ・セイコ 騎士沢署・刑事課長

  ソウマ・タツヤ 同署・刑事主任

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