第2話 B

 2030・7・12

 主人公 ケビン・カー イギリス人

 怪物倒すと魔法取得し、未来に行ける

 

 つくば市の新名所、298階建のつくばタワーが落成式を迎えた。ビルの設計者の窪田雄二とオーナーのアマン栗原は、屋上に立って眼下に広がる市の光景を見下ろしていた。


 200階の会場に300名の来賓を招いた落成式が始まる頃、ビル地下室の発電機が故障したため、主任技師らは予備の発電機を始動させた。

 その頃、100階にある中央保安室の保安係主任のアーロン五十嵐は、災害探知装置を監視していたが、警報装置が作動していないのに、異常な反応があったのに気が付く。そして、ビル内のどこかで火災が発生しているのではと考え、愕然となった。実はこの時、予備の発電機を動かしたことで小さな火花が走り配線に移ると同時に、110階にある物置室の配電盤のヒューズが火を発し、燃えながら床に落ちた絶縁体の破片が、マットをくすぶらせ始めたのである。


 アーロンの報告を受けて地下に走った窪田は、配線工事が自分の設計通りに行われておらず、配線の規格も設計したものより細いことに気付き憤然となった。アマンの娘婿で、ビル建設の責任者の竹野内浩市が、予算を減らすために行った電気系統工事の手抜きと配線の規格落ちが原因となり、110階の物置室でボヤ火災が発生していたのである。窪田は竹野内に工事の手抜きを責めたが、竹野内は建築法の規定範囲内で問題ないと突っぱねた。竹野内は、経費の切り詰めを義父のオーナーから迫られて、高層ビルでは大きな規格の配線でないと熱が生じることに配慮せず、電気配線で手抜きをしたのであった。


 落成式には、議員の西村洋介、市長の山口耕史を初めとする各界の要人や、ビルの109階より上の住居部分の住人である、詐欺師だった松重陽介や、富豪の老人の阿部祥太郎が招かれ、200階のホールへ集まっていた。松重と阿部はお互いに惹かれて行く。


 110階の物置室は火の海となり、煙が充満して室外に煙が流れ出していた。そこへ駆けつけた警備員が扉を不用意に開けたため、火が一気に広がり、扉を開けた警備員を助けようとしたケビン・カーは、火ダルマとなって致命傷を負った。現場に駆けつけた窪田は、火災の状況をみてアマンに電話し、ただちに式典を中止してビルからの退去を要請したが、アマンは、既に出動していた消防隊により鎮火出来ると頑強に信じて応じようとはしなかった。


 やがて消防隊が到着した。チーフの吾妻克彦は、現場の状況を見て火事の酷さを悟り、ただちに109階に司令センターを設置するとともに、消火ホースだけでは110階の火災は抑えられないとして、200階のホールへ行き、窪田に300人の客の緊急避難を命じた。反発したアマンであったが、しぶしぶ承知してパーティー会場を1階に移すと招待客に説明して、エレベーターで下に降りるように案内したが、招待客らは、アマンの指示に従うような雰囲気では無くなっていった。吾妻は、110階の火事の状況から、ビル内部のエレベーターがその階を通過する時に、ショートで停止して扉が開くのではと考え、アマンに内部エレベーターの使用停止を進言したが、エレベーターは既に招待客を乗せて降下した後だった。吾妻が恐れていたとおり、エレベーターは110階で自動的に扉が開き、火が中に入っていってしまった。再び最上階に上がっていったエレベーターの扉が開くと、火ダルマとなった男が出てきて倒れた。招待客らがパニックに陥る中、アーロンは、身動きしなくなった男に、着ていたタキシードを掛けるのであった。


 阿部祥太郎は、友人のケビン・カーが階下に取り残されているのに気付く。窪田やアーロンの助けもあって、幸い阿部祥太郎らは間一髪炎から逃れる事が出来た。ケビンを1階に避難させるアーロンに続こうとした窪田たちだが、途中で爆発によって階段が破損しアーロンたちと分断されてしまったため、阿部祥太郎と子供たちを連れてホールを目指す。何とか苦境を脱して200階までたどり着いたが、今度はホールに続く非常口がコンクリート塊で塞がれていた。窪田は、吾妻に状況を説明し、1階からやって来た消防士がドアを爆破してようやくホールに戻ることが出来た。


 各階に延焼して断続的に爆発が起こり、もはや地上からの救援活動では間に合わないと考えた吾妻は、自衛隊のヘリコプターによる空からの救援を要請した。しかし風が強い為、ビル屋上への着陸は困難であった。少し風が収まり、辛うじて近づいたヘリコプターだったが、屋上で風に煽られ、墜落炎上してしまった。ヘリコプターによる救助も難しいと知った吾妻は、隣接するビルから、救命籠を使う方式での救助を行う事とした。


 やがて予備の発電機が火を吹き、ビル全体が停電した。最上階からの唯一の避難経路だった、壁面を使って昇降する外部エレベーターも動かなくなったが、窪田は、ブレーキを掛けながらの1度だけの降下なら可能だと考え、阿部祥太郎たち12人を乗せて外部エレベーターを降下させる。しかし降下中に爆発に巻き込まれてエレベーターが傾き、姿勢を崩した阿部祥太郎は、割れたガラスの隙間から落下していった。エレベーターはそのまま宙吊り状態になったが、吾妻の決死の活躍で無事に地上に降りることが出来た。


 隣りのビルに繋げたロープで救命籠を動かしての避難によって、女性は全員避難を終了した。次は男性の順番であったが、延焼速度から全員の救命籠による避難が間に合わないことが明らかとなり、竹野内が予め決まっていた順番を無視して先に逃げようとした。それを制止しようとした議員らが救命籠にしがみついたが、やがてロープが切れ、救命籠もろとも地上へ落下していった。


 吾妻は、副消防署長から最後の手段として屋上にある巨大な貯水槽を一気に爆破し、その水で消火する作戦を知らされる。誰も助からないかも知れない危険な作戦であったが、他に方法が無い事を悟った吾妻は、耐火服に身をかためて屋上に赴く。

 窪田は、最上階に残った人々に作戦を伝え、水流に耐えるために身体を柱や固定物に縛り付ける様に指示し、吾妻に協力して爆弾の設置を行った。やがて大規模な爆発が起き、瓦礫とともに百万ガロンの水の奔流がビル最上階に流れてきた。瓦礫の下敷きや、水に流されて多くの人々が命を落とし、その中には最後まで留まった山口市長も含まれていたが、火災はようやく鎮火していった。


 しばらくして、救助された松重は阿部を探すが、エレベーターに乗っていた消防士から彼女の死を知らされる。保安係主任のアローンから阿部の飼い猫を渡され、悲しみにくれた。


 友人のケビンから詳細を聞いたセルシュは人物相関図をノートに書いた。


 クボタ・ユウジ ビル責任者

 アマン・クリハラ オーナー

 アーロン・イガラシ 保安係

 タケノウチ・コウイチ ビル建設責任者

💀ニシムラ・ヨウスケ 議員

💀ヤマグチ・コウジ つくば市長

 マツシゲ・ヨウスケ 詐欺師

💀アベ・ショウタロウ 富豪

 アヅマ・カツヒコ 消防隊チーフ

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