第134話 橋の前の戦い2

「散開しなさい」


 モネアは盾を大きく上下に振って最長である百五十センチの状態まで伸長し、部下たちに告げた。御者と奴隷三人は流れ弾をくらってはかなわないと横転した馬車のすぐ近く、吊り橋に向かって左側の森の中へ飛び込む。モネアの戦闘要員である部下たち六人は三人ずつに分かれ、両脇の森の中へと近付いた。


 ダン! ダン! ダン!


 吊り橋に向かって右側。


 横たわった馬車の反対側の森の中から突然銃声が聞こえたかと思うと、森へ入ろうとした三人の部下がその場で胸を押さえて屈みこんだ。


 仲間がいたか!


 モネアが銃声のした森の方へ盾を向けたと同時に、再び銃声がこだました。


 ダン! ダン!


 モネアに放たれた弾丸はしかし、盾によって全て防がれた。撃たれた部下たち三人は急いで立ち上がり、自分たちが入ろうとした森から離れ、反対側の森へと千鳥足で逃げていく。防弾衣ぼうだんいの上から撃たれたために大傷には至らなかっただろうが、あの様子ではしばらくの間、機敏には動けないだろう。


 吊り橋の前の道の中央に盾を構えたモネアが二方向を警戒し、モネアたちの部下全員は片側の森の中へと身を隠した。


 モネアは盾に隠れながら森の奥へと目を向ける。まずは仲間の居場所を見つけることが先決だ。一人ならともかく、複数人に囲まれているとなると戦い方を変える必要がある。


「お前の相手は俺だ!」


 ポピルが再びチャージ3を放った。


 バーーーン! 


 咄嗟にモネアは盾をポピルに向ける。チャージ3の威力で撃たれた弾はモネアの盾の右上部を吹き飛ばし、吊り橋の柱へと当たった。盾を持っていたモネアの手に、雷が落ちたかのような衝撃が伝わる。目を上げると、えぐられた可変式盾の右上部から焦げた木の煙がうっすらと立ち上っていた。


 こいつの銃とは相性が悪い。


「お前たち! あの男を撃ち殺しなさい!」


 モネアは命令を下し、盾は油断なく森に向けたままポピルへ電撃弾“赤”を放った。


 ダン! ダン! ダン!


 二発は外れて倒木に命中したが、一発はポピルの肩をかすめた。その反撃を皮切りにモネアの部下たちが森の中からポピルに斉射する。ポピルは素早く倒木の裏側へ飛び降りると、木を盾にしてモネアの部下たちと撃ち合いを始めた。


 部下とポピルの銃撃を見たモネアは確信する。復讐を息巻いているあの若い男は銃の腕前が下手だ。放っておいても自分に当たる確率は低いだろう。こちらは先に、森の中に潜む奴の仲間を仕留める。


 モネアにはある策略があった。

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