第125話 工場の戦い3
ナナトの考えは外れた。
身を隠したモネアは突然盾の横から拳銃を真っ直ぐナナトに突きつけ、撃発する。
ビン! ビン! ビン!
聞き慣れない高音の発射音と共にナナトのすぐ上の壁に弾が当たり、真下にいたナナトに何かの液体が被った。水をかけられたのかと思ったナナトだったが、液のかかった防弾ケープから白い煙が上がり、さらにケープは溶けるようにして穴が広がっていく。
「わっ、わっ!」
驚いたナナトは思わず立ち上がり、急いで防弾ケープを脱ぎ捨てた。防弾ケープからは白い煙が広がり、まるで水に溶かした綿菓子のように、みるみるうちに小さくなっていく。
「ナナト! 伏せて!」
ルッカの声が耳に届き、ナナトは咄嗟にその場に伏せた。直後にモネアの部下たちから容赦のない射撃が雨のように降り注ぎ、ナナトが身を隠した工作機にハチの巣のような穴を開けていく。
モネアが再びほくそ笑んだ。
溶酸弾。モネアが腰から下げる三つのボーチャードピストルのうちの一つに込められた弾である。通常の弾のように真っ直ぐ飛び、着弾後、四方に液体をまき散らす。相手の身体に直接弾が当たらずとも液をかけられる場所へ撃てばいい。一般的な防弾ケープの繊維を溶かし広がる薬品が入っているため、一滴でも防弾ケープに当たれば十センチ四方の穴を開ける。爆発弾と同様、金に糸目をつけない者だけが持ちうる特殊弾だ。
モネアたちの戦法は単純だった。
モネアが敢えて目立つところで盾を駆使して攻撃を防ぎつつ、特殊な弾で敵を燻り出し、その隙を周囲に散開した部下たちが狙いすます。モネアは攻撃手段として、四つの銃を持っていた。腰から下げた三つのボーチャードピストルはそれぞれ電撃弾“赤”、爆発弾、溶酸弾が込められ、さらに奥の手として可変式の盾の裏にダックフットピストルを下げている。相手と状況を見極めて銃を使い分け、場合によっては盾を収縮、あるいは伸長させて戦闘に有利な場所へ素早く移動する。
盾使いのモネア。ベネアード一派の幹部に立つ実力者だった。
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