第123話 工場の戦い1
「動くな。ディーノさんを放せ」
さらにナナトの背後からはツアムとルッカが同じように銃を身構えて現れる。モネアたちとの距離はおよそ二十メートル。緊張した空気が漂った。
「見世物ではありませんよ、あなたたち」
モネアが冷静に告げると、四人の部下のうちの一人がツアムを見て声を上げた。
「あの女! モネア様! あの女です! 朝にこの奴隷を庇って俺たちの邪魔をしたのは!」
よく見ると、その男は午前中、ツアムの胸部へ電撃弾を撃ち込んだ人物だった。対峙しているナナトたちから最も遠い位置にいるモネアは、丸眼鏡の奥の目を細めて招かれざる来訪者を観察する。
「この奴隷と知り合いだというわけでもないでしょうに、何故わざわざ首を突っ込むのですか?」
「もう一度言う。ディーノさんを放せ」
ナナトが繰り返した。モネアが薄ら笑いを浮かべる。
「正義感というやつですか? まったく理解しがたいですね」
言下にモネアはその場で横に一回転した。ツアムはモネアが背を向けた一瞬、腰に下げていた拳銃を手に持ったところを見る。正面を向いたモネアが冷酷な笑みを浮かべてボーチャードピストルの銃口をナナトに向けた。
「するつもりもありませんが!」
ダン!
間一髪、ツアムがナナトを横に突き飛ばした方が早かった。モネアが撃った弾は、ナナトの頭があったところを通って背後に積まれてあったパレットを穿つ。それを合図にしてツアムたちは近くの遮蔽物に身を隠し、モネアたちの部下もまたライフルを構える。
戦いが、始まった。
ルッカがトンファー型ライフル二丁を構え、モネアの部下に二発、放つ。だがそれは外れ、モネアの部下は四方へ散らばった。ディーノは一人の部下に起こされて前へ先導を命令される。
「来いっ!」
ライフルで脅され、ディーノは部下と一緒に機械の裏へ隠れた。床に突き飛ばされる形でうつ伏せに転がされたディーノの真上から部下が告げる。
「そのまま両手を頭の後ろに組め! それから額を床につけて目を瞑ってろ! 動くなよ! 石のようにじっとしてりゃあ、あとでモネア様に減刑を進言してやる」
そう言われてしまえば従うほかない。
ディーノは言われた通りの姿勢で固く目を瞑り、自分と、ナナトたちの無事を神に祈った。
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