第37話 稲森さんの発表

「修平さんのやり方は、わかったけど、

私は、ペンキが右に増えたら、塗れる面積も右に増えればいいと思いました。」

と言って俺の方を見た。

そう言う増やし方もあるかな?と思っていると、

「5年生の時にやった、分数のかけ算を思えていますか?」

と聞いてきた。

分子にかければいいというやつだなと思って、頷いた。

みんなも頷いている。

それを見て稲森さんは、

「あの時も、右にペンキが増え、同じように塗れる面積も増えていきました。

(5年生の時の分数×整数の図を描きみんなを見た。)

かけ算の基で言うと、2年生のかけ算で、お皿の上に同じ数のミカンがのっていました。

図を描くと、お皿を右に増やしていき、ミカンも右に増やしていきます。

(黒板にお皿とミカンの絵を描き、再度みんなを見た。)

どうですか?」

と聞いてきた。

俺は頷くしかなかった。

「こうなりますよね。

(お皿が右に3枚並び、その上にミカンが3個ずつ並んだ図ができた。)

それは、ミカンがお皿の増える方向に増えていました。

(2年生の図と5年生の図を指しながらみんなを見て)

かけ算は、2年生の時も5年生の時も、同じ方向に増えていきました。

だから、その方が、分かり易いと思いました。

修平君のようにミカンの量が上に伸びるのもあると思った。

でも、同じ方向に伸びた方が分かり易いんじゃないかなあと私は思ったんだ。」

と発表した。

なるほど、俺はこの問題だけを見ていたが、稲森さんはかけ算の勉強全体を見渡し、図を描いたんだ。

今までの事、既習事項って本当に大切なんだなあと思いながら、俺も稲森さんの図にしようと思った。

稲森さんの発表が終わると、先生が、

「修平君、今はどっちの図の方がいいと思う?」

と聞いてきた。

俺は、

「俺のも悪くはないと思うけど、稲森さんの方が今までの勉強と繋がっているからいいなあと思いました。」

と応えた。

先生は、

「自分の考えに固執することなく、より良いものが納得できたらそちらに移る修平君の考え方。

素晴らしいと思うよ。

今日、あなたは、発表する勇気、相手を認める心の広さ、納得して別の考えに乗り換える決断。

学んでいく時に大切にしなければならない心をいっぱい見せてくれました。

素晴らしいです。

みんなも修平君の様に学びに正直に生きてほしいなあと思います。

翔平君の頑張りに拍手を贈りましょう。」

と言った。

えっ、間違えていたのに、俺褒められるの?

ちょっとポカーンとしていると、みんなの拍手の音が降ってきた。

何だか、とっても温かい感じがした。

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松島先生、俺やってみるよ!(発表編) 大魔神 閃光 @mydreamcometrue

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