第5話 発表の目的 みんなの反応

 先生は、

「わからないことがあるとき、わからないと言った方がいいと思う人?」

と聞いた。

俺は、横目でみんなの様子をうかがった。

手を挙げている子が何人かいる。

困った様子で周りを見ている子もいる。

一人じゃない。

俺も、わからないという方に挙げる。

理由は、他の人に任せると決めた。

手を挙げて周りを見ると、全員が挙手していた。

安心すると同時に、みんなはどんな理由なんだろうと思った。

俺は、聞かれたら分かったふりをされるのは嫌だ。

正直にわからないと言う方がいいと思う。

さっきより自分の表情が強くなり、顔が上を向き、気持ちも前向きになったような気がした。

先生は、みんなを見回し、俺の所で視線が止まり、にっこりした。

それを合図にして、松下先生が俺を指名した。

俺は、「嘘はつきたくない。正直に生きたい。」と言った。

先生は、「自分の心に正直に生きる。

いいですね。

他者に迷惑をかけたり、自分の未来を壊したりする行為でなければ、

それは生きる姿勢であり、学びの基本です。

素晴らしい追求ができると思います。

正直に生きましょう。

皆さんはどうですか?」と聞いた。

みんな頷いていた。

それを確認してから、先生は、

「私たちは、正直に生きる人を支えることが出来る人になりましょう。

そうすれば、個々の素晴らしい学びと共に、必ず、授業像は達成できます。

わからなくて辛い時は、指で四を出し、先生言ってください。

わからないけど、何と言っていいか困っているんだなと受け止めます。

そして、こんな言い方はどうかな?と提案するから。」

と言いきった。

みんなそれなら出来そうと言うように表情も明るくなって頷いていた。

俺も大きく頷いていた。

次に桐山さんが指名された。

桐山さんは、今日のことを思い出してか、「わからないところを言ってくれれば、そこを説明し、みんなでわかることができるから、わからないと言った方がいいです。」と言った。

付け加えて、「強くわからないと言われると、悲しいから、ちょっとわからないとか、もう一回言ってと言ってくれると私はいいなあと思う。」と言った。

「素晴らしい。

どんな言い方をしてくれるといいかも示しているのが、一層素晴らしい。

そうやって、自分の心に正直に、相手の気持ちを考えた行動をとりたいね。

それは、自分には厳しく、人には優しくを実践していると思うよ。

みんなは発表者がわかりませんと言われた時の気持ちを感じられる。

だから、わかりませんと言えなかったと思う。

これからは、桐山さんが言ったように、もう一回言ってとか、ちょっとわからないと言えばいいね。」と結んだ。

みんなは明るく頷いた。

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