第10話 Ref&Rain




 俺たちはとうとう魔神を見事滅ぼすことに成功した。

 ただの高校生だった俺は、ひょんなことから力を授かり、同じ力を持つ者と時にぶつかり、絆を深めながら、悪神という人類の敵に立ち向かった。


 誰も称賛することのない宛のない戦いは、とうとう終演を迎えた。悪神を作り出した魔神が蘇り、悪逆の限りを尽くした。様々な犠牲を払い、仲間たちと決死の戦いへおもいた。そして世界同士が手を取り合い、人類の力が勝利した。


 だが俺は魔神が死に間際にはなった言葉が新たな予感をもたらした。


『我には見える。人間が『セカイ』を征服する未来が──。ここに正義は打ち砕かれた。絶望しろ、子どもたち。この果に、地獄がやってくるぞ』


 魔神は断末魔を上げて滅びた。それで良いはずだ。なのに、なぜ嫌な予感が胸に張り付いているのだろうか。


 ある日、俺達は悪心討伐組織『神殺』に今後について話し合うことになった。そこで、国を守るための『戦士』になってほしいという提案を受けた。無論、俺達は拒否をした。だが俺たちはどこにでもいる普通の高校生だったことを、これほどまでに痛感したことはなかった。


 家族が人質になった。逆らえばどうなるのかは目に見えていた。俺たちは奴らの要請のままに、活動を続けた。


 国内の犯罪は目に見えて少なくなった。だが『神殺』が実質日本を制服下も同然で、旧日本政府との内戦が勃発した。


 家族が内戦に巻き込まれて亡くなった。それを機に、俺はこの身に宿る『全て』を開放した。


 世界を生み出す力だった。

 日本列島は10秒で塵とかした。


 俺は神になった。その力で日本列島を復活させた。ついでに人民を選別し、周囲に結界を張った。俺という存在は世界から疎まれるようになる。


 生き残った仲間は神の俺を撃とうとした。彼らも『神』へと至ったことで、それぞれ抱く『信念』のために活動を開始した。


 あの少年は日本以外の国を我がものとした。


 その少女は世界を愛で一杯に包み込んだ。


 ある男は宇宙へと進出した。そこで新しい生命と概念を想像した。


 やがて、地球と宇宙の戦争になった。


 俺はいつまでも日本を守っていたが、度重なる攻撃に寄って範囲を狭めなければならなくなった。残ったのは、蘇らせた俺の家族だけだった。


 父は言った。お前なんか産まなければよかった。

 母は言った。私達を殺してくれと。

 妹は言った。お兄ちゃんの優しさは分かったけど、死んでほしいと。


 俺は言った。じゃあ、お前らがやれ。


 家族は神様になった。家族たちはそれぞれに行動を開始した。


 仲間とともに宇宙の正義と立ち向かったもの父は、神の一撃で死を迎えた。


 怯えて隠れていた母は、人間たちの叡智によって滅んだ。


 宇宙の側に立った妹は、地球を42731回滅ぼしたあとで飽きてしまったようで、別の次元へと旅立った。


 もう神はこの世界で俺だけになった。青い地球はマグマが煮えたぎった赤い星へと生まれ変わり、宇宙という概念は地球だけを表すようになった。


「愛と夢、世界に広がり、滅び散る」


 そうやって俺は、また創造をするのだ。


 みんなやりなおしていい。ふたたびたちあがろう。

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