第3話 す~からす~からすっ

★7月11日

何だか騙りのようで、本のタイトル変えた。

自分で自分を騙るってな?

と、思ったら、被ってるタイトルあって

また変えた。


そんな訳で、バス通してるわけで、

乗ってる間、何気に外を眺めたりする。


夜が明けた街は掃除からはじまる。

オーナーさんだったり、従業員だったり、

箒で掃いたり、トングでつまんだり、

起きて間もない街は、

木の葉だったり、煙草のポイ捨てだったり、

げろおぞましいものが散らかってたりもする。


通りざまに見る景色として、

所謂おじさんがトングでごみをつまんでた。


次の日も、

トングでごみをつまんでた。

そんな代わり映えのしない日常の積み重ね。


しかし、その日は違ってた。

おじさんがいつものようにトングでゴミを拾ってた。

歩道は綺麗になった。

と、思いきや、

ちょっと目を離したすきに、紙くずが散らばっていた。

兄ちゃんが通て行った。

げっ、まじ?

と、心の中で怒りを感じた。


それでもおじさんは、トングで紙くずを拾う。

顔色変えずに淡々とした様子で紙くずを拾う。

歩道は綺麗になるはずだった。

が、拾えども拾えども紙くずは無くならない。

小さくちぎった紙くずだ。


あっ、兄ちゃんごめん。

はらはらと降る紙くず。

見上げれば、

す~からす~からす?

カラスが紙くず散らしてた。

建物の上に止まって、下を覗きながら、

面白そうに紙くずを降らしてた。


信号が変わり、バスは走り、

その後のことは知らない。


あれ以来、おじさんの姿は見ない。






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