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年上の少女が

幼い少女の目を覆ったけれど

どうして逃れることができようか

その光景は 既に少女の脳裏のうりに達していた


見えたのは 足だ

ぬっと 灌木の茂みの合間から突き出した

青白く 泥にまみれた傷だらけの足が

そして 見覚えのある指先が


あの優しかったそばかすだらけの女の子は

もう二度と 戻ることはないのだと

少女は ぼんやりとした心地でいた

何かが引いていくのを感じながら


昨夜一人戻された少女が 奇声を上げた

笑うとも 泣くともつかず 顔をゆがめて

一人 檻の片隅で体を強張こわばらせ

まだらな金色の髪を かきむしって


少女たちは その様子を 冷めた目で眺めた

雲が重くどんよりとした朝だった

世の中が 一層薄暗く

どうしようもなく憂鬱ゆうつな朝だった

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