第175話『オノコロジマ』
かの世界この世界:175
『オノコロジマ』語り手:テル(光子)
取り返した時は二間に満たないアメノヌホコだったけど……
「待ってくれ、ニケンというのはなんだ?」
ヒルデがのっけから聞いてくる。
そうか、ヒルデは北欧神だから、日本の尺貫法で言っては理解できない。
「一間は1・8メートルのことよ。あ、まだまだ伸てる!」
「おお!」
イザナギ・イザナミが二人で手に取ったアメノヌホコは、みるみるうちに長く伸びていき、はるか下方のカオスに下りていく。
「見えなくなったぞ」
「目を凝らせば見えてくると思う、このカオスにも上下の区別が出てきたし、上の方から空気が澄んできている」
ズボ
「なにかに突き刺さったな……ヌホコが、あんなにしなってるぞ」
突き刺さった先は、まだ見えてこないけど、ヌホコのしなり方で粘度の高い液体のように感じられる。
「似ているぞ」
「え、なにに?」
「ブァルキリアの祭りで、ドラゴンの玉子で巨大なオムレツを作ったことがあるんだ。トール元帥が張り切ってな、ミョルニュルのハンマーを巨大なオタマに変えてかき混ぜたんだ、あの時の感じだなあ」
「あ、そう言えば『中二病でも恋がしたい』の六花のお姉ちゃんの小鳥遊十花の武器はオタマだよ!」
「それは、きっとトール元帥の反映だな。そうか、あの姉はカミングアウトしたトール元帥だったのか!?」
「でも、凸守早苗のツインテールはミョルニルハンマーとか言って振り回していなかった?」
「あれは、中二病の幻想だろ、姉を相手にして勝ったことは無いはずだぞ」
「そうだった?」
「そうだ、だいいち、六花は牛乳が大の苦手だろ。十花に負けて瓶牛乳を無理やり飲まされて死にかけていたぞ」
「ああ、あったあった。丹生谷森夏にも飲まされて、盛大に吐き出していたなあ」
「ヴァルキリアの人間で牛乳が飲めないやつなんていないからな」
「ちょっと静かにしてもらえませんか、気が散って集中できない」
イザナミに怒られる。
ちょっと盛り上がり過ぎた(^_^;)
ピチョ
やがて、ヌホコの先から雫が落ちる音がした。
すると、下界の霞はヌホコを中心にみるみるうちに晴れ渡っていき、広大な海の真ん中に雫が落ちて島になったのが分かった。
「なんの島だろう?」
スマホで調べると『オノコロジマ』と出てきた。
「実在の島か?」
「……いろいろ説があるみたいね……淡路島の横っちょの沼島とか播磨灘の家島とか……博多湾の能古島という説もある」
「近畿エリアと九州エリアか……そう言えば、日本の天皇家の始まりは近畿と九州に分かれていると聞いたぞ」
「あ、それは邪馬台国」
「え、邪馬台国が大和朝廷になったのじゃないのか?」
「ちょっと、静かにしてください!」
また、イザナミに叱られる。
「おい、あの二人、素っ裸になって島に下りていくぞ!」
「あ、お邪魔しちゃ悪いかなあ(#'∀'#)」
「イヒヒ、この先、どんなフラグが立ってんのかなあ(^#▽#^)」
「なんか、いやらしいよ」
「イザナギ・イザナミって、おなじとこから生まれてるから、ひょっとして兄妹!? え、妹系のエロゲだったりするのか!? これは、たしかめなくっちゃあ!」
「ちょ、ヒルデ、じゃましちゃ……」
金髪のスケベは涎を垂らしながらオノコロジマに下りていく、なんだか、妹系ラブコメのヒロインのようになってダイブしていく。
「まってくだされ、キリリン氏!」
あ、わたしもキモオタ女っぽくなって追いかけてしまう……
☆ 主な登場人物
―― この世界 ――
• 寺井光子 二年生 この長い物語の主人公
• 二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば逆に光子の命が無い
• 中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
• 志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
―― かの世界 ――
• テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
• ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
• ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
• タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
• タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
• ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
• ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
• ペギー 荒れ地の万屋
• イザナギ 始まりの男神
• イザナミ 始まりの女神
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