第145話『ラタトスクのナフタリン』
かの世界この世界:145
『ラタトスクのナフタリン』語り手:ロキ
舳先の下の隠れて瞬間見えなくなった……次の瞬間、舳先の上に躍り出たのは栗色のチュニックを着た女の子だった。
トリャー!…………オットット(;^_^A
威勢のいい声で決めポーズ。マーメイド号が帆船だったら、そのまま舳先のフィギュアヘッド(船首の飾り)にしてもいいくらいにカッコイイ。しかし、タタラを踏んでガニ股でふんばる姿はみっともない。
「おまえ、ユグドラシルのラタトスクだな?」
タングリスさんが遅刻してきた生徒の名前を確認するように聞いた。
「知っていたんだ。見かけよりはかしこいのかもな」
「ユグドラシルのメッセンジャーは足が速いが口が悪い。予断と偏見に満ちたラタトスクに頼るくらいなら、自分で航路を切り開く」
「ラタトスクってなんだ?」
予備知識のないテルさんが基本的な質問をする。オレもよく分かってないので耳を傾ける。
「ユグドラシルは八つの世界で出来ていて、その世界の連絡役がラタトスクと呼ばれるリスなんだ」
「だからメッセンジャー?」
「口が悪くて、用件の他に一言余計なことを言うので有名なんだ」
「でも、この子……虚勢は張ってるようだけど、なんか余裕のない感じ」
「さすがはオーディーンの姫だ、でも、むかつく……」
腰に手を当てて胸をそらせたたかと思うと、踏ん張った形のいい足は、またタタラを踏んだ。
「あぶない!」
おもわず駆け寄って落ちてくるラタトスクを抱きとめてしまった。なんだかやわらかくってドギマギしてしまう。
「おまえ、どこ触ってヽ(#`Д´#)ノ……おまえは時の女神ウルズのガキ?」
「ガキじゃねえ、ロキだ!」
「ああ、そうだったな、ガキ」
「ガキ言うな!」
「怒んな。おまえの誕生をユグドラシル中に触れ回ったのはあたしだ……ちょ、離せ! まだ話、あるから」
「わ、わ、ごめん!」
「ラタトスクと言うのは種族の名前で、あたし個人の名前はナフタリンだ、まちがえんな!」
「ラタトスクは複数いるのか?」
「いまは、あたし一人」
「どういうことだ?」
「ユグドラシルが漂流し始めた瞬間、シナプスに居たのはあたし一人だったんで助かった」
「シナプス?」
みんな、わけわからないので、タングリスさんが前に出た。
「八つの世界を繋ぐユグドラシルの回廊のようなものです。ラタトスクは、ユグドラシルが根なしになって漂流すると生きてはいけません、神経伝達物質のドーパミンやセロトニンみたいなものです」
「そんなミンとかニンとかじゃねえ、ナフタリンだつってるだろ!」
「物の例えだ」
「そうだったのか、概念以上の知識が無いのでな。ゆるせ」
「ちょうどいい、ナフタリン、わたしたちをユグドラシルに案内してくれ」
「フン、ナフタリンは案内の為に来たんじゃないし」
「案内でなければ、だれかの伝言か?」
「ちがう、自分の意思で、自分の言葉を伝えにき……」
「ナフタリン!」
意識を失いかけたナフタリンを再び抱きとめる。背中を支えた手がちょっと胸に触ってるんだけど、今度は憎まれ口もきかない。
「ロキ、みんなに伝えろ……ユグドラシルに来ちゃダメ……だ……」
それだけ呟くと、ふたたび意識を失うナフタリン。
オレの襟首を掴んだ手は意識を失っても、強く握られたままだった……。
☆ ステータス
HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)
装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト) 思念爆弾
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます