第144話『ユグドラシルを目指して・2』


かの世界この世界:144


『ユグドラシルを目指して・2』タングリス      






 最後にユグドラシルが確認された海域を目指すことにした。



 巨大な世界樹ユグドラシルを目指しているとは言え、闇雲に海を突き進んでも見つけられる可能性は低い。


 いつ巡り合えるとも知れないユグドラシルを追っていては気持ちが萎える。


 まして、時間が停まってしまった世界で出くわすのはクリーチャーか精霊に属する者だけだ。人や自然に属する者は。ことごとくフリーズしている。夜がやってこないので熟睡することも難しく、このまま当てのない航海を続けていては身も心もボロボロになってしまうだろう。



 とにかく、行けば、痕跡なりと見つけられるかもしれない。



「ただの言い伝えだから、がっかりしないでくださいね💦」


 

 情報提供者であるユーリアは、顔を赤くしてワイパーのように手を振った。



「港のクィーンに選ばれた時に覚えさせられた詩の中に入っていたってだけですから」



 ヘルム港のクィーンに選ばれると、伝統的に決められた就任の挨拶をしなければならず、その中に――ヘルムの東2:10分より来たりし客人(まろうど)が――という一節があり、その客人というのはユグドラシルから来たということだった。



 それがヘルム暦三百年で、いまから五百年前の話。わたしたちが知っているのはさらに昔の神話時代の話だから、五百年前でも、ついこないだの感じなのだ。


 現実的にはロキが一番新しいのだが、戦災孤児として発見されたのがムヘンの地であり、それ以前の記憶は断片的で、所在に関するものではないので、ユーリアの詩の記憶に頼らざるを得ないのだ。



 しかし、方角は決められたが、距離が分からない。



「よし、行ってみよう」



 姫の決断には――四の五の言うな――という響きがあった。主神オーディンの姫としての矜持が言わせた決断だ。わたしは静かに頷いて舵輪を回したのだった。



「姫、当直を代わります」


「いいよ、まだまだ余裕だ」


「しかし、もう三十六時間になります」


「大丈夫、主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士ブリュンヒルだぞ、見よ、我が頭頂のアホ毛を!」


「ん?」



 三十六時間にわたる当直で姫の髪はボサボサになっていて、頭頂の一房が、ゆらゆら揺れながらも一定の方角を指している。要は汗と潮風でゴワゴワになっているだけで、臣下たる身としては一刻も早くシャワーを浴びてお休みいただきたいのだが、神意の宿るアホ毛と言われては注目せざるを得ない。



「お、アホ毛が立ち上がりました!」


 アホ毛が何かを探知した!


「非常呼集!哨戒を厳となせ!」


 伝声管に向かって非常呼集をかける。みながラッタルを駆けあがってくる音がして、前方に目を据える。



 マーメイド号の前方二百メートルほどの海面……ピョンピョン跳ねるものが現れた。




 

☆ ステータス


 HP:20000 MP:300 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・300 マップ:12 金の針:60 福袋 所持金:450000ギル(リポ払い残高0ギル)


 装備:剣士の装備レベル55(トールソード) 弓兵の装備レベル55(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 空蝉の術 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)  思念爆弾


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 


 

 

 

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