第115話『ヤコブとユーリアの母』


かの世界この世界:115


『ヤコブとユーリアの母』語り手:ブリュンヒルデ      






 ヘルムの平和のためには必要なのよ



 みんなが寝静まっているので、囁くような声でもよく聞こえた。


 ユーリアを真ん中にして親子三人が語り合っているのだ。


 内容もさることながら、その密やかさは立ち入ってはいけない雰囲気だ。呼吸を乱さないように気を付けて目を閉じた。


「それは分かっている、でもユーリアの兄として納得できない。親子兄妹は骨肉だ、その骨肉を引き剥がされようという時に他人やヘルムがどうのこうのって関係ないよ」


「でも、お兄ちゃん。ヘルムが平和でなきゃ、我が家の平和も無いのよ。でしょ、ヤマタの力が衰えれば島の外ばかりじゃない、大昔にヤマタが封印したクリーチャーたちも蘇って災いをもたらすのよ」


「それでもいやだ、間違ってるよこんなこと!」


「聞いて。ヘルムにもオーディンの国にも車が走って飛行機が空を飛んでるわ。車や飛行機を使うことによって昔では考えられない便利な生活を送っている。でも、車や飛行機の事故で、毎年数千人の人が命を落としている。その人たちは、みんなが便利さや快適さを享受するための生贄と同じだよ。ううん、ヤマタは四年に一回しか生贄を要求してこない。四年に一人犠牲になるだけで四年間の平和が約束されるのよ。生贄に捧げられる日まで、ヘルムの人たちは女王のように扱ってくれる。わたしが居なくなった後のお母さんの生活も保障してくれる。そのことでわたしが命を長らえることは無いけど、それがヘルムの人たちの優しさだと思うのよ。お兄ちゃん、間違えないでね、わたしは、ユーリアは喜んで生贄になるんだからね」


「それでも、間違ってるよ。予定される犠牲と言うのは間違ってる! そんなの人の生き方として間違ってる! 間違った犠牲の上に築かれる平和とか繁栄は偽物だ!」


「お兄ちゃん……」


「ヤコブ、聞いておくれ」


 ほとんど口を挟まなかったお母さんが語り始めた。


 自然な寝息をたてるのに苦労する。傍らの四号の乗員たちは気持ちよさそうに眠っている、こんな大事な話をされて、よく寝ていられるもんだ。やはり、わたしは主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士、我が名はブリュンヒルデなるぞ! この親子の相克を見過ごしにはできない!


「わたしも、十七の歳でヤマタの生贄に選ばれたんだよ」


「「お母さんが!?」」


「不思議だろ、こうして生き延びて、あんたたちを産んで育てたんだからね」


「生贄になって生きているなんてあり得ない……」


「どういうことなんだ、母さん?」


 わたしの耳も研ぎ澄まされた。しっかり聞こうと寝返りを打ったら、同時にロキが寝返って、わたしの口と鼻を塞いでしまう。


 ウ……ウグググ


 息が出来ない。


 一分近く辛抱したが、限界だ。


 プハーーー!!


「「「なに?」」」


 しまった、親子三人がこっちを見ている!




☆ ステータス


 HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー


 持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)


 装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)


 技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)


 白魔法: ケイト(ケアルラ) 


 オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)


☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫


 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる


 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士


 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係


 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 


 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児


 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6サイズの人形に擬態


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い


 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長


 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 




 


 

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