第110話『シュネーヴィットヘン入港』
かの世界この世界:110
『シュネーヴィットヘン入港』語り手:テル
ポチが触れ回ったのでデッキはどこも鈴なりになった。
貨物デッキは注水のため、海面から一メートルの高さしかなく、接岸すると岸壁よりも低くなる。
このままでは岸壁と対面してしまうので、一同は四号の車体の上に整列した。
数千人の島民が『歓迎 シュネーヴィットヘン!』の横断幕や飾りつけに負けないほど色とりどりに着飾って出迎えてくれる。
地元高校のブラスバンドが動員されたのだろうか、オモチャの兵隊のような衣装で行進曲に編曲したオーディン国歌を吹奏してくれている。
四号の車体が岸壁の高さなので、車体に立って歓迎の人たちと同じ高さだ。
感激のあまり、お迎えに動員された幼稚園児が駆け寄ってきて船に乗り移ろうとした。一人が駆けだすと、みんな後について来て、ちょっとした騒ぎになる。接岸間近とは言え、船と岸壁の間は一メートルあまりの隙間がある。落ちてしまえば助けようがない。引率の先生や近くの大人たちが必死で停めて事なきを得たが、女の先生が落ちてしまった。
セイ!
反射的にムチを振って女先生の腕を絡めとって救助する。
「ロキ、ケイト、先生を介助して主砲に跨れ」
三人を主砲に跨らせると、砲塔がゆっくりと九十度旋回して、砲身の先一メートルちょっとが岸壁に届いて女先生を無事に届ける。期せずして船と岸壁の双方から盛大な拍手が起こった。
あまりのすごさにビックリすると、上のデッキの兵隊たちがしきりに指をさす。岸壁の後ろには映画のスクリーンほどのプロジェクターがあって、一部始終を映していたのだ。後ろの人でも良く見えるようにという配慮なんだろうが、今の救助をアップで映されるのは面はゆい。
ジリジリと所定の位置に近づく。すでに船はエンジンを切ってタグボートの力だけで動いている。速力はほとんど一ノット、人が歩くほどの速度だ。
幼稚園児たちが過ぎて、島民たちの集団が過ぎていき、ブラバンの前を通過、島のエライサンたちが巡ってくると、歓迎の花束を持った港の女王が現れた。
本来なら、船の中央でラッタルが下ろされるところに待ち受けているはずなのだが、大型船に慣れないタグボートが押し過ぎて、百メートル近くいきすぎ、船尾貨物デッキの我々のところが、歓迎団の中央になってしまった。
目の前に港の女王が迫ってきた。
「か、可愛い……わたしの次くらいに可愛いぞ」
砲塔の上でポーズを決めていたブリュンヒルデが呟き、他の乗員もため息をついた。
「……ユーリア!」
砲塔の後ろで控えていたヤコブが声をあげた。
――おにいちゃん!――
女王は口の形だけで驚いている。
我々とヤコブの妹ユーリアとの初対面だった。
☆ ステータス
HP:9500 MP:90 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・70 マップ:7 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高25000ギル)
装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー) テル(マジックサイト)
白魔法: ケイト(ケアルラ)
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます