第101話『乗船名簿』
かの世界この世界:101
『乗船名簿』語り手:タングリス
稀に漏れることがある。
シュネーヴィットヘンの状況を掴んでおきたくて船長に申し出た。
なんせ、休戦後初の連絡船なので混乱があるのだ。とりあえず後方に移送しなければならない傷病兵や、戦争のため満期除隊が遅れていた兵士、いろんな部隊から送られてきた連絡将校たち、度重なる戦闘で部隊が壊滅しノルデンハーフェンに集合した雑多な兵士たち。とりあえず船に乗せて送り出さなければ、あとから続々と移送されてくる復員兵が溜まって動きが取れなくなるのだ。雑多な寄り合い所帯なので、船長に確認しなければ船の状況が掴めない。
その船長の乗船名簿にヤコブ伍長の名前が無いのだ。
我々は、遊撃偵察隊五名で指揮官はブリュンヒルデで登録されていた。登録自体は手回しのいいヤコブがやってくれていて、ポチの事も軍用妖精と記されている。
しかし、肝心のヤコブの名が無いのだ。
「休戦直後なので、稀に漏れることがあります。お気づきのことがあったらお知らせください」
乗船名簿を管理している二等航海士が付け加えた。
「ありがとう、きちんと書かれているよ」
ポーカーフェイスで答えておく。
「船はまっすぐグラズヘイムに向かうのだろうか?」
「その予定ですが、状況次第では立ち寄る島があるかもしれません」
言っていることは分かる。最大の紛争地帯はムヘンだが、レーゲ海には多くの島々があって、中には問題を抱えた島もある。今度の休戦で急な移動を迫られているものもあるだろう。
「ヘルム島はどうだろう?」
「無いと思います。守備隊がいますが、今次の戦いでは戦場になっていませんので、緊急な移動も無いと思います」
「そうか、ありがとう」
そこで質問は打ち切った、他に数名の将校たちが乗船名簿確認の順番を待っていたからだ。
「なんでヘルム島だったのだ?」
ブリッジ横のウィングへ出た時にテルが尋ねてきた。
「かすかにヘルム訛があるのでな」
「ヤコブのことか?」
さすがに鋭い。
ノルデンハーフェンに着く直前に、ベルゲパンターにただ一人乗って現れた。
休戦が成立し、戦場に残された故障車両の修理と搬送に整備部隊の移動があってもおかしくはない。
しかし、単独というのは考えにくい。戦車は修理するにせよ移動させるにしろ一人で出来るものではない。最低でも四五人のクルーが居なければ仕事にならない。
ヤコブは機嫌よく四号の修理をやってくれたが、修理中に後続の修理部隊が通過していった。ヤコブ一人が部隊から離れてフライングする必要は……というよりも不自然だ。シュネーヴィットヘンに乗り込むときも、ヤコブは修理作業中ということで四号に乗ったままデリックに吊り下げられて現れた。
黙って頷くと、テルと二人で貨物デッキに戻っていった。
☆ ステータス
HP:7000 MP:43 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー
持ち物:ポーション・55 マップ:6 金の針:0 所持金:500ギル(リポ払い残高35000ギル)
装備:剣士の装備レベル15(トールソード) 弓兵の装備レベル15(トールボウ)
技: ブリュンヒルデ(ツイントルネード) ケイト(カイナティックアロー)
白魔法: ケイト(ケアルラ)
オーバードライブ: ブロンズスプラッシュ(テル) ブロンズヒール(ケイト)
☆ 主な登場人物
―― かの世界 ――
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
タングニョースト トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属
ロキ ヴァイゼンハオスの孤児
ポチ ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体 82回目に1/6の人形に擬態
―― この世界 ――
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます