第102話『我が名はブリュンヒルデなるぞ!』


かの世界この世界


102『我が名はブリュンヒルデなるぞ!』語り手:ブリュンヒルデ






 パープリンの電波女と思われているであろう。



 主神オーディンの娘にして堕天使の宿命を背負いし漆黒の姫騎士、我が名はブリュンヒルデなるぞ!


 されど剥き出しではならない、この現世(うつしよ)には現世の定めがあるのだ。


 闇の世界の理(ことわり)に比すれば取るに足らない戯言同然の愚か極まるローカルルールではあるが、それが、カタストロフィに至る我が使命を果たすまでは従わねばならぬであろう。それこそが、父であり世界の主神であるオーディンの戒めさえ破って、このレーゲ海に船を進める我が闇のデスティニーであるのだから。


「ず~る~い~! そっちの方が二十グラム多いぞ!」


「そんなことはない、目測でも五ミリはヒルデの方が大きいじゃん!」


「見た目ではない、質量が違うのだ! 立法センチあたり八以上のものでなければ我が霊性は保てぬのだ、四の五の言わずに、そっちをよこせ!」


「もーーーー仕方ないなあ、仮にも隊長なんだからさ、そういうデレ方しないでくれる」


「デレてなどおらぬわ!」


「それに、王女様なんだから、威厳とか慎みとか感じさせてくれなきゃガックリよ」


「バカかケイトは! わたしが、あるがままに振る舞えば、おまえたちは息も出来ぬであろーが! それゆえ精神年齢を、おまえたちに相応しくして付き合ってやっておるのではないか! それをデレとかガックリとかは心外じゃ! 我が意をくみ取り、さっさと我が霊性に相応しき方をよこせ!」


「かわいくな~い(´¬_¬)」


「うっさい、シリンダーの変異体ごときが、高貴なる身に文句を言うでないわヽ(`Д´)ノ!」


「あ、殿下。こちらの方が製造日が新しいですよ」


「そ、そうか、新しい方が霊性は高く保てるであろうからな……」


「ようは、美味しそうで大きいのを食べたいんだ」


「なんか言ったか?」


「いえいえ……」


 ようは、船内配食で配られたばかりのパンの取り合いをやっているのだ。




 タングリスはテルといっしょにブリッジに調べものに行っている。


 口うるさいタングリスが居ないのだ、こんな時くらいはハッチャけてやらねば息が詰まる。ロキは幼いし、ケイトは大人しすぎるし、わたしがやらねばどーしようもない。な、そうであろうが!


「ヤコブ、ちょっと顔を貸せ、糧食の霊的配給方法について言って聞かせよう」


「え、自分がでありますかあ!?」



 もうワンクッション置いてからと思ったが、ラッタルを貨物デッキに下りてくるタングリスが視界に入ってきた。タングリスにやらせれば、事が必要以上にこじれてしまう。トール元帥の有能な副官であるが、委員長タイプで、こういう裏ワザには向いていないのだ。


 手摺の所まで呼んで、核心を突いてやった。


「ヤコブ、おまえは脱走兵であろう……」


 実直が軍服を着たような四角い顔の丸い口が酸素不足の金魚のようにパクパクしはじめ、パンくずの餌でもくれるのかと数羽のカモメが舷側に並んで飛び始めた。




☆ ステータス


 HP:9000 MP:100 属性:テル=剣士 ケイト=弓兵・ヒーラー

 持ち物:ポーション・60 マップ:5 金の針:0 所持金:1500ギル(リポ払い残高34400ギル)

 装備:剣士の装備レベル25(トールソード) 弓兵の装備レベル25(トールボウ)

 憶えたオーバードライブ:ブロンズヒール(ケイト) ブロンズスプラッシュ(テル)


 

☆ 主な登場人物


―― かの世界 ――


 テル(寺井光子)    二年生 今度の世界では小早川照姫

 ケイト(小山内健人)  今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる

 ブリュンヒルデ     無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘の姫騎士

 タングリス       トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係

 タングニョースト    トール元帥の副官 タングリスと共にラーテの搭乗員 ノルデン鉄橋で辺境警備隊に転属 

 ロキ          ヴァイゼンハオスの孤児

 ポチ          ロキたちが飼っていたシリンダーの幼体


―― この世界 ――


 二宮冴子  二年生   不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い

 中臣美空  三年生   セミロングで『かの世部』部長

 志村時美  三年生   ポニテの『かの世部』副部長 

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