第41話『二号戦車』
かの世界この世界:41
『二号戦車』
冗談のように見えたのは、数時間前まで乗っていたラーテのせいだろう。
ラーテは1000トンもある超重戦車だったが、目の前の石畳で停車したのは10トンもない軽戦車だ。
呆気に取られて、気づくのに数秒を要したが、それは二号F型だ。
ほら、『ガルパン』の劇場版で、幼いころの西住姉妹が乗っていたやつ。
大きさは宅配便のトラックほど。いや、高さは2メートルを切るから、宅配便のトラックよりも低いかもしれない。
カチャ
キューポラのハッチを開けて出てきたのはタングリスの相棒のグニ(タングニョースト)だ。
「よかった、まだ出発されていなくて。どうぞ、この二号戦車を使ってください、操縦はタングリスがやります」
「やっぱり、ここを出ると顔が指すか」
「城塞は元帥のコントロールが行き届いているが、外へ出るとなると……」
「ムヘンポートに向かうのだぞ」
「念のためだ」
「……そうか」
グニとグリの会話から、ムヘンそのものから出るまでは気が抜けないことが分かる。
「いいじゃないか、二号は三人乗りだが、ブリとケイトは小柄だから、なんとかなるだろう」
「国境警備仕様なので四人乗りになっています、ムヘンポートまでですのでご辛抱ください」
「識別番号が城塞警備のままだが」
「城門を出れば切り替わる。前線への補給に化けて行くつもりだ。軽戦車で窮屈ですが、ご辛抱ください」
わたしに向かって敬礼すると、戦車の鍵をグリに渡し、回れ右……したところへ、買い出しの二人が帰って来た。
「おう、タングニョースト、見送りに来てくれたのか!」
「ちっこい戦車! キュークツそう!」
リュックいっぱいの戦利品を揺すりあげて胸を張るブリとケイト。
どう見ても、これから遠足に出かける小学生のノリだ。
「あいにくですが、乗るのはわたしたちですよ」
「え……冗談だよな?」
「冗談なのは、二人のリュックだ。おやつは三百円までって言ったろがー」
「三百円以内だよ! みんなタダでいいって言うんだけど、ちゃんと三百円は渡してきたぞ。ケイトの分は建て替えてっから、あとでくれ」
「それは、後ほどの補給でわたしが持って参りましょう、安心してお預けください」
「「それってオアズケだあ!!」」
「文句言うな」
しぶしぶリュックを差し出す二人。ポケットに忍ばせた分は大目に見てやる。
「あ……っと、そのツインテール、狭い車内では危険ですね」
「あ、そっか。なら、解いて短くしてもいいぞ🎵」
「解くのは事を成し遂げてからです。わたしが、なんとかしましょう」
グニは、あっという間にブリのツインテールを五センチほどのお下げにまとめてしまった。
プータレる二人をグニと二人で摘まみ上げるようにして二号の中に放り込む。
ブルン……ブルルルルルル
ブリが手際よくイグニッションを入れ、二号は本営の外を半周して城塞の北門を目指した。
☆ ステータス
HP:500 MP:500 属性:剣士=テル 弓兵=ケイト
持ち物:ポーション・15 マップ:2 金の針:5 所持金:5000ギル
装備:剣士の装備レベル5(トールソード) 弓兵の装備レベル5(トールボウ)
☆ 主な登場人物
テル(寺井光子) 二年生 今度の世界では小早川照姫
ケイト(小山内健人) 今度の世界の小早川照姫の幼なじみ 異世界のペギーにケイトに変えられる
ブリ ブリュンヒルデ 無辺街道でいっしょになった主神オーディンの娘
タングリス トール元帥の副官 タングニョーストと共にラーテの搭乗員 ブリの世話係
二宮冴子 二年生 不幸な事故で光子に殺される 回避しようとすれば光子の命が無い
中臣美空 三年生 セミロングで『かの世部』部長
志村時美 三年生 ポニテの『かの世部』副部長
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