第24話 大子と演技
時刻は水曜日の午後十一時半。季節は春。
大子はアニメを見ていた。大子はもともとアニメを見るのが大好きで、時間さえあればアニメばっかり見ていた。
その大子が見ているアニメは青春群像劇。いろいろな境遇の主人公が出てきて、各々がいろいろな壁にぶつかり、それを乗り越え一緒に作品を作っていくという物語だ。
「今回はどんなストーリーなんだろう」
今回も楽しみだ。ワクワクが止まらない。
その物語は声優を目指している人をヒロインとした作品だった。
結論から言うと、大子はこの声優さんを目指している姿に圧倒された。
「かっけぇぇぇぇぇ!」
そして、そのキャラクターに惚れた。
その女の子はかっこよくて、かわいくて、もう言葉にならないほど大子の胸の中を埋め尽くした。
アニメの中での声優を目指しているヒロインはめちゃくちゃ輝いていた。
それが大子が声優を目指すきっかけとなることは自然の摂理だった。
「かっこいい」との演技に感動したと同時に、そのアニメがきっかけで声優さんのアニメのラジオ番組も聞くようになった。『声優』という職業の魅力に憑りつかれていった。
声優さんは演技だけじゃなくて、ラジオや生放送、歌も歌うのか~声優さんって色々な仕事の幅があるんだな~というのが率直な感想だった。
それから大子は『声優』という職業に興味を持ち、『演技』というものに興味を持つ。
大子はそのアニメの物語が狂おしいくらい好きだった。何度も何度もセリフも暗記するくらい見た。そして、そのセリフを吹き替えしてみて、自分で演じることもあった。
その後、大子は演劇部にも入り演技というものを知っていく。演技というものを通して、自分を表現できるようになっていく。
そして……。
「大子君、演技上手いね。あの感動的なシーン、思わず泣いちゃったよ」
そう先輩にいわれるほどまでに上達していた。自分の演技が褒められた、人の心に刺さった、その人の心に届いた。それがとてつもなく嬉しかった。
これがきっかけで、大子は演技というものにハマっていく。そして、いつの日か本気で声優になりたいと思うようになっていった。だから、バイトしてお金を貯め、養成所のお金に充てた。
バイトも最初は大変だったが、徐々に慣れてきて後輩もできた。
それはだんだん熱くなっていく高校一年生の夏のころだった。
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