異世界乗法-吹き飛ばされた世界が終わってました-

なよ竹の竹

第1話

俺は神だ。ある1つの世界の。といっても、神の世話をする神だ。 世話の神ではない。この雲の上にいるような世界には8人の神がいる。俺はその神の神殿の掃除やお供えを届ける仕事をしてはや800年。

俺は神にして別の世界に吹き飛ばされた。



私は人間。地球という星に暮らしていた人間という生き物の最後の生き残り。3歳の頃に私以外の人間が死んで、ずっとシェルターで1人、生き物を狩って生きてきた。

そんな生活をしてはや14年。シェルターの学習プログラムによると私は高校生という職業らしい。そんなある日、まるで枯れたトカゲのようなイケてる男の子に出会った。



「痛いんですけど……」


重く感じた体を起こしあげる。


「えーと、とにかくここはどこだ?」


ここは雲界の下の世界だろうか。1度だけ下から覗いたことがあるけどあの時より随分廃れている。あの時は人がたくさんいて、たくさんの人が板のようなものをずっと眺めて人が作ったものを使って暮らしていた。

ここは人が全くいないし、人が作ったものも随分朽ちている。10年ほど前の事件に何か関係があるのだろうか。


「えーと、俺は雲界の神の世話をする神で、超かっこいい男の子。800歳ぐらいで、生まれた理由が神の世話をするっていうクソみたいな理由にさえ反感を抱かず800年真面目に仕事をこなしてきたハイスペック男子だ。」


よし、頭はしっかりしている。


とにかくここがどこなのか見極めるため、歩いてみよう。


ーーーーー2時間後ーーーーー

「つ、つ、つ、つまんねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


俺の叫び声が大きな怖い顔押した塔のあるここ一帯に響く。


「はあ!?何ここ、どこここ!?なんもないじゃん!?最初はここら辺色んな形や色の建物あって面白いなあって思ったけどさあ!?人がいないんですけどひ・とが!!!!おもんねぇぇぇぇ!!!!」


久しぶりに叫んだので喉が少し痛い。肩が上下するのを抑えて一呼吸……。出来ねぇよ!!


「せっかく、下の世界に来たから期待してたけど廃れた建物があって生き物いるう!って思ったら逃げられるしさあ……。」


俺は砂の上に座る。初めて触れる砂の感触はサラサラしてふかふかして、何だか心地よかった。

雲界には雲と小さな草原が点々とあって神殿があるだけの世界だった。草原の感触とはまた違うふかふかが良い。


「あーこれからどうしよー。神の力でも使えない限りは……。………って、俺神じゃん!!忘れてた!!」


そう、俺は神だ。ので、当然神の力が使える例えば1人でも。

ということで!!


「言霊!異動世界!!」


…………………………………………………………………………………………………。


神であるはずの俺に今、力が宿っていないことを今確認した。恥ずい。1人だから余計恥ずい。


「誰かぁぁぁぁぁ!!俺を嘲笑ってくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」


そう叫ぶ彼の喉はしばらく機能しなかった。



ビュンッッ!!

彼女が放った弓は見事に豚の急所を射抜いた。弓で狩りを初めて5ヶ月。大分扱いに慣れてきた。罠を張って生活していたときより豊かになった気がする。


もう何年も狩って食って寝て勉強しての生活を送っているけどそろそろ飽きてきた。

人類が14年前に私以外みんな死んでしまい、途方に暮れていたら人類が残したシェルターを見つけた。

そこには何百年分かの生きる糧が残されていた。衣類、寝床、食料、教育、人類が残した音楽や漫才、動画。シェルターは以外にも快適で、当時の私はそれを理解出来ないままシェルターで暮らしていたが、ようやく最近この世界の歴史を理解して来た。


私は健康だし、頭も結構良いっぽい、なによりビジュアルが良い。少し茶色のかかったミディアムヘア。目元ぱっちり鼻筋通った美少女。

今、私は世界で1番可愛い自信がある。

いや、世界に私しかいないんだけど。


そう、地球にはもう私しかいない。私だけが生き残った意味がよく分からないからシェルターに来て間もない頃は1人でよく泣いていた。いや、今でもたまに泣く。一晩中。ご飯もしばらく食べれなかった。ただひたすら音楽をかけていた、暗いメロディーの曲を。

早く死にたかった。早くお母さんとお父さんの元に行きたかった。


だけど、もうそんな風に考えるのもやめたい。

私が今生きているのも天命というやつなのだろう。私は私が納得するまで生きよう。そうすれば、みんなに会った時褒めてくれるだろう。そう考えようと思い始めた。1人でもしっかり生きようって。


そう思って高槻から吹田市に来てみたら、見たこともない超かっこいい男の子がバテバテになって倒れていた。

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