第73話 1週目クリアランクB

 凛太と桜田は時に操作するプレイヤーを交代して、時にご飯休憩やお菓子休憩を挟みながら闇憑き洋館を攻略していった……。


 それは夕方に桜田が訪ねてきてから翌日の深夜4時までずっとで、ゲームは点けっぱなしだった。朝までやるなんて言った時は半信半疑だったが本当にぶっ続けでプレイした。


 焦る必要はないと思いながらも何かを期待していた凛太だったが桜田はイメージ通りホラー一筋の女の子だった。やめるのには良さそうなタイミングが訪れても「もっともっと」とせがまれたし、休憩していた時間には別のおすすめホラゲーを紹介されたくらいだった。


 けれどそんなところもかわいかったし、凛太も興味ありげに話を聞いた。


 そしてその熱心なプレイの結果、1日で闇憑き洋館の通常プレイをクリアしてしまった。


「これで終わりっすよね」


「うん。ゲームクリアだね。おめでとー」


 エンドロールが流れ終えて画面が暗転したところで2人はテレビに向かって軽く拍手した。


「えっとクリアランクは……Bか」


「こんなんも出るんですね。もう11時間もやってるのか。Bってどうなんすか」


「DとかEもあるし良いほうじゃないかな。点けっぱなしでやってたし、私がいらない寄り道させたりしてたから」


「あれやっぱいらない寄り道だったんすか」


 2人は姿勢を崩して笑った。ホラー好きの桜田の為に嫌々長時間プレイしたのではなく凛太も普通にゲームが面白くて楽しめた。時間はあっという間に過ぎたという感覚があって、満足した笑いだった。


「初見プレイでこれだけできるなんてやっぱ草部君ホラゲーいける口だね。しかもホラゲー自体やるの初めてだったんでしょ」


「はい」


「だよね。これは今度また別のホラゲーもやらせてみたいな……」


「本当ですか。ぜひやりたいですね……。でも評判通り難しかったすよ。桜田さんのヒント無しじゃこんなに早くクリアできてないです」


「うんうん」


「悪夢治療のほうも練習が必要だって言ってたのがやってみてよく分かりましたよ。こりゃ凄いゲームですわ」


「本当それなの。ここ数年でぶっちぎりで1番面白いね。難しいけど。ぶっちゃけ1通りやってみてもまだ敵の行動パターンとか完全には把握できてないでしょ」


「はい。もう必死にプレイしてました」


「じゃあやっぱりまだ練習が必要だね」


 それから2人は次にまた2人でホラゲー練習会をする日時を具体的に決めた。2人のスケジュールを照らし合わせて次に桜田に会うのは3日後となる。この件の悪夢治療を行う日は馬場が患者に一週間後を提案してみると言っていたがまだ連絡がないのでなるべく早い日になった。


「またこうやって難しい悪夢任された時も草部君にパートナーお願いしよっかな」


「え、嬉しいです。つーか前にもこんなゲームの夢あったんですか」


「いやゲームに限らず難しくて誰かが治療できない夢とかあったらいつも私に任されちゃうからさ。まあそれは別にいいんだけど。私1人じゃ難しいってときも増川さんや宮部さんじゃ同い年の男子で変な感じになっちゃうし……春ちゃんは怖がりだから誘ったら可哀そうでしょ」


「ですね……。まあそれならぜひ遠慮なくというか、僕に声かけてくれたら喜んで力になりますよ」


「ほんと?嬉しい。じゃあ私が悪夢を楽しめるくらいもっと闇憑き洋館のこと詳しくなっといてよ。そしたら私もっと嬉しい」


 そんな話が終わった後はお開きの雰囲気になって、桜田は帰ることになった。楽しかった時間も終わりである。


 凛太は話の終わりの桜田の笑顔と言葉に燃えた。上手いこと大変な役を任されてしまった気もするがもう止まらない。桜田にもっと喜んでもらうため褒めてもらうためホラゲー漬け生活をやるしかない。

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