第62話 巷で噂の
闇憑き洋館は流行りのホラーゲームだった。今年の初夏に発売された新作で小さなゲーム会社が作った無名の新作であったがその出来の良さにより爆発的に売り上げを伸ばした。
凛太もそのゲームについて詳しく知らないが、そんなホラゲーに全く興味が無い凛太でもそのゲームの存在は知っていた。SNSで「この間発売された新作ホラゲーがやばい」という趣旨の投稿がいくつも拡散されていたからだ。
SNSで拡散された投稿を見るまではそんなやばいホラゲーが発売されるなんて全く知らなかった。発売後に少数のプレイヤーから噂が噂を呼ぶように広がっていった闇憑き洋館。ホラゲーとしては出来がいい本当に面白いホラゲーであることはこの事実からだけで伺える。
加えて、平仮名で書くと「やみつきようかん」となるタイトルも話題になった理由だった。おそらくわざと平仮名でホラゲーと書かずに闇憑き洋館について画像や動画を投稿したものがトレンド入りして、どんな美味しい羊羹なのかと調べた人もその恐怖に驚かされた。
敵として登場する数々の化け物たちは今まで見たことが無いほど異質で、ゲーム内のプレイヤーを襲う姿は凛太も頭の中に残っている。常人では想像もしないような恐怖の対象の異質さと難易度の高さが闇憑き洋館の特徴だった。
「だから、その難易度がまずいんじゃないですか」
「まあ草部君や患者さんにとってはまずいかもね。でも私はとっても楽しみ」
「ですよね。桜田さんなら……」
「安心して草部君。何を隠そう私は闇憑き洋館を自分でプレイしてクリアしたから」
胸に手を当てて誇らしいとう様子の桜田。たしかにクリアしたことがある人が隣にいるのは頼りになりそうだ。本当に今日一緒なのが桜田で良かった。
けれどそれでも凛太は不安だった。今回の悪夢の中に入るのが嫌だった。手に持つ悪夢ファイルの最後には「この病院の治療では悪夢を克服するイメージが得られると聞きましたが、あの洋館の中に入れられてリアルに動く化け物たちを見るととてもじゃないですが逃げれるようなイメージは湧きません。大丈夫でしょうか」そう書かれていた。
凛太も患者と同意見だった。シンプルに操作の難易度だけでその辺のアクションゲームよりよっぽど難しいと聞く。患者をすぐに見つけられたり完全に再現されてないことを祈るばかりだ。
「うわあ。本当にこんな奴らを間近で拝めるのかな。患者さんナイス悪夢だな」
患者の悪夢が始まるのを待つ間、凛太は桜田の隣でスマホを動かし闇憑き洋館について調べた。
「いや、ヤバくないですかこのゲーム見てるだけで気が狂いそう」
「言っても草部君ももうこれくらい見ただけじゃそんなに怖くないでしょ」
「まあそうですけど。でもこいつら再現されてるなら絶対僕らのこと殺しに来るじゃないですか。見てもあんまり怖くはないかもですけど痛いのは嫌です」
スマホ内で拡大表示された化け物が持つ刃物をよく見ると、それが自分の手や足に刺さることを想像してしまって痛みまで伝わってきたような気がした……。
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