第23話 ダンジョンコアの秘密


「これがダンジョンコアで間違いないな? 使い方を教えろ」


「なっ!? か、返せ! クソガキがぁ!」



 落ちていた宝石を拾い上げると、槍人が怒声をあげるが、毒島に締め上げられて静かになる。



「大人しく使い方を教えるんだな、お前のような外道に俺たちは容赦しない」


「へっ! どうせ教えたら俺を殺るんだろ? なら教えねーよ」



 俺の言葉に、槍人は強がったような笑みを浮かべる。

 よし、その覚悟が本物か試してみよう。


「毒島」


「あいよ!」



 毒島が槍人の指に手を伸ばすと、小枝が折れるような音が響く。

 その直後、槍人の口から絶叫が迷宮に漏れた。



「ぎぃやぁぁっ!? なっ、なにしやがんだ!」


「あ? 指折って爪剥いだだけだぜ?」



 それがどうしたといった顔つきで毒島は剥ぎ取った爪を放り捨てる。



「なっなんでこんな酷いことを!? お前ら人間じゃねぇ!」


「酷いことねぇ……」



 毒島の雰囲気が剣呑なモノへと変わっていく。

 これは少し不味いかもしれない。

 毒島は犯罪によって家族を失っている。

 そのため犯罪者や子供を食い物にする連中には容赦しない。



 ダンジョンコアの使い方を吐かせる前に死なれるとマズい。

 俺はいつでも毒島を止められるように一歩近づくと、ピリピリとした空気が俺の肌を炙った。

 これは毒島の奴、本気で怒っているな。

 毒島は槍人の胸倉掴んで、人を射殺すような視線を放つ。



「テロで罪のない連中を殺すことは酷くないってか? あ?」


「う、うるせぇんだよ、この筋肉ゴリラがぁ! たいして死んでねぇーだろうが! それより手が痛ぇんだよ! 早く放せってんだ!」



 その言葉に額に青筋を浮かべた毒島が再度、槍人の爪を剥がし、槍人が絶叫する。



「痛いだと!? てめぇのテロの被害にあった連中の方がもっと痛ぇだろうが!

 どんだけ死んだと思ってんだ?  最低でも1000人は死んだって話だ。

 1000の幸せをテメーはぶっ壊したんだぞ!?」


「ひいぃっ!!」



 毒島の剣幕に怯えたのか、槍人は顔色は蒼白となる。

 すでに奴の顔は、涙と鼻水でぐちゃぐちゃだ。

 止めを刺すかのように、毒島がさらにガンをつける。



「さんざん壊してきたんだ。俺がテメーをぶっ壊してもよ、まさか文句はねぇよな?

 30秒ごとに爪をひっぺがす。それが終わったら指と耳の番だ。気が向いたら喋ってくれや」


「分かった! 喋る! 喋るよ! だからもうやめてくれぇっ!!」




 ◇


 一時間後、俺たちは槍人を締め上げて、ダンジョンコアの使い方を洗いざらい履かせた。

 一応、安室のエスパー並みの直感によって、嘘や言い残しがないかきっちりチェックしてもらったし、問題ないだろう。

 問題はこの男だ。

 俺は力なくうなだれた槍人を見下ろす。



 槍人をどうするか考えていたら、毒島が近寄ってきた。

 毒島は無言だが、目を見れば言いたいことはよく分かる。

 この男――槍人は罪のない民間人の命を奪いすぎた。

 とても放置はできないし、危険だ。

 かといって、こんな下衆野郎の血で仲間の手を汚したくない。



 ふと、俺の頭に妙案が浮かんだ。

 さっそく俺はその思いつきを口にする。



「みんな、こいつは大地の割れ目に放置しよう」


「大地の割れ目……ってあそこか?」

「なるほどな、あそこなら……」



 クラスの皆が納得した表情を見せる。

 この前領地を視察した時、とんでもなく深い割れ目があったのだ。

 シュリ達はそこを『大地の割れ目』と呼んで、忌み嫌っていた。

 なんでも昔、処刑場だったらしい。



『大地の割れ目』の真ん中に断崖絶壁があり、まるで川で言うところの中洲みたいな所になっている。

 なんでもその場所に罪人を置き去りにし、餓死させるという処刑法を取っていたらしい。

 崖を降りようにも、『大地の割れ目』には巨大な人食い昆虫が住み、非常に危険とのこと。

 俺たちも度胸試しに『大地の割れ目』を降りてみたが、中々厄介な奴がいて苦戦したものだ。



 あそこに槍人を置き去りにすればよいのだ。

 脱出しようにも、崖を降りれば凶悪な巨大肉食昆虫の群れが待ち構えているから、槍人は降りれないだろうし。

 じっくりと飢えを味わい、せいぜい自分の罪を後悔して果ててもらおうじゃないか。



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