第14話 サメ狩り2


「戻れ! 浦島ぁっーー!!!」



 沖にいる浦島に向かって、俺たちは慌てて叫ぶ。

 さすがの浦島でもこれは無理だ。

 だというのに浦島はその程度では慌てない。

 それどころか自分からサメの方へと泳いでいく。

 サメ狩りの申し子のプライドが逃げることを許さないのか!?



「おい! 秀也、どーすんだ!?」

「秘策を出してくれ!」

「このままじゃ浦島がヤベェぞ!」



 まずい! 皆が狼狽えている。

 助けに行くにしても、このままじゃ満足に力が出せないだろう。

 これは喝を入れねばなるまいと、俺は大きく息を吸った。



「狼狽えるな、みんな! 思い出せ! 獅子堂学園のサマーキャンプで、ナイフ一本渡されてサメだらけの海へと蹴り落とされたことを! あれに比べればどうってことないだろう!」



 俺の叫ぶような言葉に皆が静まり返る。

 きっと当時のことを思い出しているのだろう。

 まだ俺たちが一年生の時、サマーキャンプでオーストラリアに連れて行ってもらったことがある。

 当時は海外旅行など初めてだったから、とてもはしゃいでいたのを覚えている。

 レストランで2キロの特盛ステーキを食べながら、皆と自由時間どこ行く~?とか話してたっけ。



 おかしいなと思ったのは午後からだ。

 まず座学がおかしかった。

 猿でもわかる! サメの解体方法。

 そんな実戦動画を見せられ、サメの行動パターンを叩き込まれた。

 夕方になると、プールを泳ぐサメ型ロボットとの訓練だ。

 この時点で俺は嫌な予感がした。



 次の日、俺たちはクルーズ船で沖に連れていかれた。

 教官たちは血肉を海にバラ撒き、サメを呼び寄せると、俺たちにこう言ったのだ。



『戦い方は教えた。後は実戦だ! 各員、ナイフを持って海に飛び込め』


「え、ギャグですよね?」



 俺の声はきっと皆の心の声でもあったと思う。

 俺たちは教官たちに海に蹴り落され、大パニックだった。

 それを見た男――浦島が1人でサメの群れに飛び込んでいったのだ。

 たった一人でサメの群れを解体する浦島を見て、俺は正気に戻った。

 他の皆も勇気づけられたのを見て、俺は皆にハンドサインを出して3人一組でチームを組み、サメ狩りを開始した



 結果的に、怪我人や死人は誰も出さずにサメ狩りを終える事が出来た。

 それは浦島のおかげと言ってもいだろう。



「浦島が居なかったら、俺たちはマジでヤバかった。そんな命の恩人の危機に立ち上がらないなんて男じゃない!!」



 俺の叫びに皆の目に闘志が戻っていくのを感じる。

 怯える男の目ではなく、誇りを持った戦士の目つきだ。



「確かに!」

「そういえばそうだな」

「さすが秀也だぜ!」



 俺はみんなを見渡す。

 誰もが力強い、良い目をしている。

 これならばイケるはず!



「みんな! サメ狩りの時間だ!」



 そう叫ぶ俺と共に、クラスの皆で海に突撃した。

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