ミッション4 海に行こう!

第13話 サメ狩り


「海だぁっーー!!」


「「「いやっほぅっーー!!」」」



 俺たちはシュリに案内され、海に来ていた。

 別に遊びに来たわけじゃない。

 領地に海があるのに、まともに漁が出来ない理由があるらしく、それをこの天才が解決しに来たのだ。



 一刻も早くこの海を平和に、遊泳可能にしなければならない。

 でなくばいつまでたってもシュリやイバラさんの水着姿が拝めないではないか!

 いつにも増して俺たちのやる気は高い。

 もちろん遊ぶ気もあるけど。

 硬派な俺たちだって可愛くてナイスバディな女子とイチャイチャしたいんだ!



「それで? シュリ、俺たちは誰を殺せばいい?」


「何でも言ってくれ! そしてこの海が平和になったら水着を着てくれぇ!」

「この海辺を占めてるヤクザと揉めてんのか? 秒でシメるから水着来て下さい」

「俺たちに任せろ! そしてHな水着を着て見せてくれ!!」



 鬼気迫る俺たちにビビったのか、シュリは後ずさりながら苦笑いする。

 笑おうとしているようだが、顔が引きつっているみたいだ。

 慌ててイバラさんがシュリを隠すように前に出て来る。

 まるで血走る俺たちの視線からシュリを守るかのようだった。



 まずい、怖がらせてしまったか!?

 狼狽える俺たちの前で、イバラさんがそっと海を指さした。



「賢者様、この海が利用できないのは奴のせいです」



 イバラさんの指の先を辿ると、海から飛び上がった巨大なサメが大きな怪鳥に食らいつくのが見えた。

 デカいな!

 20メートルはありそうだ。

 伝説のメガロドンとかいう奴か?

 海中であんな奴を相手にどう戦うか……。

 悩む俺の前に一人の男が歩み出る。



「どうやら俺の出番のようだな」


「お、お前は……浦島・ステイサム・太郎!」



 浦島・ステイサム・太郎。

 彼こそはサメ狩りの名人。

 獅子堂学園のスカウトマンに見いだされるまで、世界各地で家族とサメ狩りで生計を立てていた中学生だった。

 なんと14才までにハントしたサメの数は100を超えるとのこと。

 まさにサメ狩りの申し子である。



「やれるのか? 浦島……」


「一匹だけなら一人でも余裕さ。まぁ見てな」



 そういうと浦島は海に飛び込み、矢のような速度で沖へと泳いでいく。

 さすが獅子堂学園で水中戦ナンバーワンの称号は伊達ではないな。

 あっという間に巨大サメの元まで泳ぎ切った浦島を見て、シュリ達が慌てだす。



「ま、まずいですよ! このままでは……!」


「大丈夫だろ」

「むしろサメがヤバくない?」

「だなー」


「大丈夫さ、シュリ」


「ふぇ?」



 俺たちの会話にシュリが怪訝な声を上げる。

 その直後、轟音と共に巨大サメが空中に飛び出してきた。

 海に飛び散る大量の鮮血。

 当然ながらそれは浦島のモノではない。

 空中でのた打ち回る巨大サメの目玉に、浦島がナイフを突き立てているのが見える。だが巨大サメも負けていない。

 空中で体勢を変えた巨大サメは、浦島を丸飲みにしようと飛びかかる。



 だが――。


「浦島流鮮魚活殺術 三枚落ろし!!」



 浦島が技名を叫ぶと同時に、巨大サメが三枚に下ろされていく。

 解体に5秒もかかっていないだろう。

 三枚に下ろされたサメの死体が滝のような鮮血と共に海に降り注ぐ。

 恐るべき早業に、俺は思わず息を飲む。



「……さすがだな」


「ああ、サメ達の死神の異名は伊達じゃねえな! 俺でもあのサイズを解体するには10秒はかかるぜ」


「マジで!? やるじゃん毒島。俺は20秒はかかるぜ!?」

「俺もそのくらいかな。すげえな、毒島は」



 浦島の活躍に、クラスメイトは口笛を吹いて感心する。

 だが、皆の言葉に俺は内心焦っていた。

 俺は5メートル級のホホジロザメの解体に3~4秒もかかる。

 どうやら勉学に励みすぎて、体術をおろそかにし過ぎたようだ。

 鍛え直さねばいけないな。

 俺がそう思っていると、シュリが慌てた様子で叫び出す。



「いけません! 血に反応したのか、他にもたくさん来てます!」



 沖を見ると、デカい背びれが2匹分、小型の背びれがたくさん近寄ってくるのが見えた。

 デカい方はさっきのより一回り小さく、15~6mくらいだろうか?

 この2匹だけなら浦島だけでもどうにかなるかもしれないが、問題は小型のサメだ。

 軽く見積もっても100匹入るだろう。

 さすがにこの数は浦島だけでは無理だ。

 


(浦島が死ぬ……?)



 最悪の想像をしてしまい、皆の顔が死人のように青ざめた。

 

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