第6話一般人

「かんぱーい!」


里美は今居酒屋にいた

SNSの仲間達と別れたあとこんなLINEをもらったからだ


『里美~今日飲まない?楽しくやろ~』


それは学生時代の同級生だった


「どうするかな……」


ミズハを入れた鞄を持ち、帰りの電車に乗り込もうとしていたところだ

里美は少し考え


「いいよ、っと」


そう返信した


「ねぇねぇ里美!最近どう?」


里美の同級生、明日香が話しかけてきた


「最近って、、、仕事ばっかだよ」

「えー!彼氏いないの~?」

「えっ、うんまぁ忙しいし……」

「今のうちに作っとかないと結婚できないよ~」


余計なお世話、里美は思う

明日香はこの手の話が好きだった

学生時代からやれあの人カッコいいだの、あの人はないだのよく騒いでいた


「何だかつまんな~い!!里美美人なのに」

「あははは……今は仕事が恋人かなぁ?」


正直あまり興味がない、今はミズハを始めとするドールがかわいいし何よりそのドールにお金がかかる

恋愛なんて二の次だ

ドール趣味には手を出すなとはよく言ったものだ

毎月服だの小物だの欲しくなる、ヤバい


「明日香はどうなの?恋人いるの?」

「聞いてよ!私できたの!!」


明日香のテンションが爆上がりする

このために今回誘ったのか


「彼氏カッコいいの!芸能人でいえば俳優の吉沢亮みたいなの!いいでしょ!」

「あ、そうなんだ。かっこいいね」

「でしょでしょ!?」


これは自慢話をされるパターンだ

仕方ない、聞くか


「もぉ、顔は完璧だし、イケボだし、性格いいし」

「うんうん」

「ごはんおごってくれるし、優しく扱ってくれるし」

「へぇ~」

「お洒落だし、仕事もできるしもう素敵!」

「よかったね~」

「でも……」

「?」

「ガンプラ持ってるの、あれアニメのオモチャ」

「……」


で?里美は思った。ガンプラ持ってる男子たまにいるよ?


「何だかそこが引っ掛かるのよ~、いい年してオモチャだよ!?そのうちフィギュアとか買うのかな~?」

「……さぁ?」

「オタク?って感じしなかったのになんかショックでさ~」


私はそんなことで引く明日香にショックだよ、里美は思う

別にいいと思うけどな、ドールオーナーにはフィギュアにも手を出している人もいる

SNSとかで写真も見るがドールとは違う魅力があり、それはそれでいい


「別れるの?」

「わかんない、でもオタクは嫌」

「……そう」


なら私ともお別れだね、心の中でそう思う


「ん?」


明日香はふと何かに気がついた


「どうしたの?明日香?」

「その鞄何?」

「えっ?」


それはミズハが入っている鞄だ

家に置いてくる時間がなくてそのまま持ってきたものだ


「えっ?ただの荷物?だよ?」

「ふーん、でも大きいね」


ミズハは60cmくらいある、当然だ


「気になるな~」


なんでよ!

里美は焦った、この流れでドールを見られたら絶対ひんしゅくを買う


「明日香!飲もう!」


里美は慌てて話を反らす

店員を呼びカクテルを頼む


「えー、カクテル?チューハイがいい~」

「わかった!ならカクテルは私が飲むから、チューハイ頼み直すから!」


里美は一人わたわたしながらその場を取り繕った


「じゃあね、楽しかった~」


あのあとたっぷり話を聞かされた

仕事のこと、家族のこと、彼氏のこと、ほぼほぼ自分のことだった


「またね!明日香!」


真っ暗の中明日香を見送る

明日香はスキップをしながら帰っていった

……私は

何だか疲れた、朝はあんなに楽しかったのに

SNSで知り合った本名も知らない人の方が楽しいなんて、どうかしてる


「帰ろ……そして寝よう」


里美は闇の中歩いて帰った

肩にかかる重さが痛い、酔いなんてなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る