第5話主人公視点

(よく来たな、エイル神の聖女ローザ)


 ビックリしました!

 いきなり心の中に神のお言葉が響いたのです。

 エイル神の聖女である私には分かります。

 今話しかけてくださっている方は、神です。

 魔獣や魔族のような、悪意のあるモノではありません。


(お言葉を賜り恐悦至極でございます。

 畏れ多くもエイル神の加護を頂いたローザと申します)


(この堅苦しい話し方は止めろ、ローザ。

 俺はそんな話し方をされると身体中が痒くなるのだ。

 普通に話すんだ。

 いいな!)


 これは困りました。

 普通に話す方が難しいですが、仕方ありません。

 神様が普通に話せと申されるのでしたら、そうするしかありません。

 それでも所々丁寧になってしまいますが、それは許してもらうしかないでしょう。


(分かりました。

 できるだけ普通に話させていただきます。

 でも、時に丁寧になるのは許してください。

 あまり普通に話した事がないのです)


(しかたがない奴だ。

 普段から丁寧に話しているのなら許してやる。

 だが、できるだけ丁寧な話し方ではなく、普通に話すのだぞ)


(ありがとうございます。

 それと、身体を治してくださったこと、心からお礼申し上げます)


 私は兵士に斬られたはずです。

 そのまま放置していたら、確実に死んでしまうくらいの、深手だったはずです。

 それが完治しているのですから、眼の前の神様が助けてくださったのは明らかで、お礼を言わなければいけません。

 丁寧な言葉使いは禁じられていますが、お礼の心を伝えるのに、丁寧な言葉を使うのは当然だと思うのです。


(ああ、そんな些細な事は構わん、気にするな。

 それよりも大変だったな。

 エイル神から話は聞いている。

 ここでゆっくりとするがいい)


(ありがとうございます、神様。

 畏れ多い事ではありますが、お名前を聞かせていただいて宜しいでしょうか?)


(おい、もっと砕けた話し方をしろ。

 身体が痒くてしかたがない)


(申し訳ありません。

 どうかお許しください。

 つい口にしてしまうのです)


(本当にしかたがない奴だ。

 少しずつでも直すのだぞ。

 それと俺の名前か。

 俺はフェンリルという)

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