真銀の聖女は極悪令嬢に奈落ダンジョンに突き落とされましたが、ダンジョンの聖女になりました。地上は滅べばいいのです。

克全

第1話主人公視点(残虐描写有)

「平民の分際で調子に乗り過ぎたわね。

 今思い知らせてあげるわ!」


 確かに私は調子に乗り過ぎていたようです。

 エイル神様の加護に頼り過ぎて、保身を忘れていました。

 でもそれも仕方ないと思うのです。

 平和ボケしていると言い続けられた、日本人の知識と記憶をもったまま、この世界に転生してしまったのですから。


「分かりました。

 平民は平民らしく、小さくなって生きていきます。

 ここから、この足で、隣の国に出てきます。

 だから許してください」


 卑屈だと言いたい人間は、言えばいいのです。

 根性なし恥知らずと言いたい人間は、言えばいいのです。

 眼の前に、明らかに常軌を逸した表情の、貴族令嬢の一団がいて。

 両手を屈強な兵士に捕まれているのです。

 この状態で、命よりも誇りを優先する人がいたら、その人こそ異常者です。


「それはダメよ。

 お前が生きている限り安心できないわ。

 死体がでてきても困るわ。

 下賤なお前になぜ加護が与えられたのかは分からいけれど、エイル神の加護でいつ蘇るか分からないもの。

 だから、ここに投げ込んであげるわ。

 魔界と繋がっていると言われいる、奈落ダンジョンにね!」


 極悪令嬢の言葉を聞いて、恐怖に震えてしまいました!

 この国で、最も魔界や地獄に近い言われているのが、奈落ダンジョンです。

 神々の加護も届かないと言われている、絶望の場所です。

 そんな所に投げ込まれてしまったら、エイル神様の加護であっても、届かないかもしれません。


「止めてください、お願いします。

 なんでもします。

 どうか助けてください」


「ふっふっふっふっ。

 なんでもするですって?

 だったらその兵士とまぐわいなさい!

 私達の見ている眼の前で、平民らしく見境なく不義密通するのです!」


 なにかが、私の中で切れました。

 古いと言われようと、遊びで恋愛などできなかった前世です。

 心から慈しんでくれた両親に躾けられた、揺るがない価値観があるのです。

 この世界では捨て子として育ったからこそ、前世の両親の教えは、私の核です。

 こんな腐れ外道共に踏みにじらせるモノですか!


 私は全力で、両腕を確保している屈強な兵士を振り払いました!

 私が進んで身を任せると思い、欲望で油断していたのでしょう。

 もしかしたら、ワルキューレの一柱であるエイル神様が、力を貸してくださったのかもしれません。


 素早く前進した私の目の前に、一番私に悪意を持って虐めていた、ハワーデン公爵家令嬢ゼイネップの顔がありました。

 一切の手加減をせずに、かぎ爪に構えた右手でゼイネップの顔を切り裂きました。

 とは言っても、刃物ではなく爪と指だけです。

 中指がゼイネップの頬に穴をあけ、唇まで引き裂きました。

 そのまま勢いを緩めず鼻を削ぎ取りました。

 人差し指がゼイネップの左目にかかり、眼玉をひっかけて引きずり出しました。

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