『奈津、しあわせですか?』

夏華

プロローグ

「お母さん、私を生んでくれてありがとうございます。二十五年間、育ててくれてありがとうございます。お父さんの分も沢山愛情を注いでくれてありがとうございます。お母さんにはどれだけありがとうの言葉を言っても足りません。言葉では言い表せないほどの感謝の思いで一杯です。私が幼い時、お父さんはどこにいるのと聞いた事を覚えていますか? お母さんは私の手を私の胸に当てて、心臓の鼓動の源がお父さんだと言いました。それからはお父さんに会いたくなったら、胸に手を当てていました。だから、いつもお父さんは私の中にいました。そしてお母さんはいつも側にいてくれました。私にとって、二人はかけがえのない人です。それは、龍也さんと結婚しても変わる事はありません。

 龍也さんのお義父さん、お義母さん、龍也さんを生んでくださりありがとうございます。お二人がいらっしゃたから、龍也さんと出会うことができました。この先、どんな試練が待ち受けているかもしれませんが、寿命が来た時、龍也さんと結婚して、幸せな人生だったと言いたいです。

 龍也さん、まだまだまだ未熟な私ですが、末長くよろしくお願いします」

 

 一人娘の友紀が結婚した。

 

 久保田奈津は友紀が読む手紙を聞きながらこれまで歩んできた自分の過去を走馬灯のように思い出していた。

 

 奈津は二十八才の時、友紀を一人で産んだ。

 

 友紀の父親は奈津の勤める会社の十才上の上司だった。

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