高校生企画 童話脚本 嘘をついたねこくん
青田堂
①嘘をついたねこくん
神様「むかしむかしのそのまた昔。にんげんが生まれるよりもずっと前のお話。とある町では、天のかみさまになるため、動物たちの競争があったそうじゃ。じゃが、かみさまになれるのは、先に山のてっぺんにある神社に辿り着いた12匹だけ。中でも足に自信のあったねこくんは、たいそうやる気に満ちていたわい。」
ねこ「この競走だけは勝ちたい……、そうだ! 皆を騙しちゃえばいいんだ!」
ねこ「トカゲくんトカゲくん、元気ー? 実はあのレース、もう終わってるみたいだよー!」
神様「ねこくんは他の動物達を片っぱしから訪ね、次々と自慢の嘘でだましていったのじゃ。」
ねこ「さっき猿くんが犬くんの悪口を言ってたよ!」
いぬ「なんだって!? ねこくん、教えてくれてありがとう!」
ねこ「よし、このまま僕以外が競争をしなければ、僕だけがかみさまになれるぞ!」
神様「そして待ちに待ったレースの日、ねこくんはなに食わぬ顔で現れたぞい。どうやらねこくんは他の動物を信用できず、自分だけがかみさまになるつもりなのじゃ。」
ねこ「僕以外は12匹か。でもかみさまになるのは僕だけだ!」
神様「レース始まりの鐘が鳴り、ねこくんは誰も知らない裏道を使って先回りしたのじゃ。そこで他の動物達がゴールしないように足止めをするみたいじゃな。」
ねこ「おーい、竜さんやーい!」
ねこ「おーい! 竜さんやーい!!」
りゅう「おや? どうしたんだい、ねこくん」
ねこ「実は、大事なすずを落としてしまったんだ。あれが無いと、僕は、僕は……」
りゅう「仕方ないな、一緒に探してあげるよ」
神様「りゅうさんがねこくんのすずを探していると、うさぎさんやとらくんが現れたのじゃ。」
りゅう「ずいぶん探したけど、全然見当たらないな。」
うさぎ「あれ?りゅうさん!こんなところで何してるの?」
りゅう「実は、ねこくんがすずを無くしたらしくて、探すのを手伝っているんだ。」
うさぎ「そうなんだ、じゃあ私たちも協力するよ!でも、それはどんなすずなの?」
りゅう「えーと……それはねこくんに聞き忘れちゃったな。」
うさぎ「それは大変。私ちょっとねこくんを探してくるね。」
神様「うさぎさんは、りゅうくんととらくんを残してあちこち探し回ったのう。」
うさぎ「おーい、ねこくーん。どこにいったの。」
うさぎ「ねこくーん。ねこくーん。」
ひつじ「どうしたの、うさぎさん。そんなに声を張り上げて。」
うさぎ「あっひつじさん!実は今りゅうさんととらくんと一緒にねこくんが無くしたすずを探してて、すずの見た目がわからなかったからねこくんを探してるんだ。」
ひつじ「私にできることなら、手伝うよ。」
ひつじ「私は少し戻って麓の方を探すから、馬くんはこの辺をお願いね」
神様「ひつじさんは来た道を引き返し、ねこくんを探し始めたぞい。じゃが、見つかるまでにそんなに時間はかからなかったそうじゃな。」
ひつじ「あ、ねこくん。向こうでうさぎさんがねこくんのことを探していたよ。」
ねこ「そうなんだ。でも、僕は今足を挫いてしまって行けそうにないよ。」
ひつじ「それなら大丈夫。私の背中で運んであげるから。」
りゅう「ねこくん、一体どこまで行ってたんだい。実はここを通ったトラくんやうさぎさん、馬くんと羊さんにも協力してもらってすずを探したんだよ」
うさぎ「でも、どんなすずかわからなくて探しにくかったの。」
へび「やあみんな。こんなところでどうしたんだい。」
りゅう、うさぎ、ねこ「へびくん!」
うさぎ「みんなでねこくんのすずを探しているの。」
へび「もしかして、そのすずってこれのことかな。」
ねこ「それ、僕のすず!」
りゅう「そのすず、どこで見つけたの。」
へび「昼寝をしていたねこくんの横に落ちてたよ。あまりに綺麗だったから拾っちゃった」
りゅう「ねこくんが昼寝をするはずないよ。ねこくんはすずを無くしたことを、俺に泣きながら話してきたんだ。」
ねこ「そうだよへびくん。僕はとっても困ってたんだ、昼寝なんてするわけないじゃないか。」
へび「ぼ、僕は嘘なんてついていないよ。ねこくんのすずをとったことはあやまるよ、ごめん。でも、本当にねこくんの寝ている姿を見たんだ。」
さる「あれ、みんなここでなにしてるの。」
いぬ「猿くん、どうしたの。って、ねこくん! 酷いじゃないか!」
ねこ「どうして二人とも怪我をしてるの。」
いぬ「僕たちはさっきまで喧嘩をしてたんだ。ねこくんが、猿くんが僕の悪口を言ってるって教えてくれたから、さっき猿くんに噛みついたんだ。それからはひっかく、噛むの繰り返しだよ。」
さる「でも喧嘩の後、わかったんだ。犬くんはねこくんに騙されていたんだって。だから僕たちはねこくんを許さない」
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