自爆

「ねぇ、洋子さんの隣にいる女の人って誰?」


 ホテルの1階のコンビニから出てきて安西さんと喋っていると奥のエレベーターから洋子さんとその腕に抱きついている女性が出てきた。


「あぁ、妹の香織さんですわ。とある研究の第一人者になっておりますわ」

「ふ~ん、妹がいたんだ。香織って言うんだ……。って、何!?」


 急に腕を引っ張られて横通路のトイレまで連れ去られてしまった。


「仁美様が女の顔になってましたわ」

「僕、女だよ!?」

「違いますわ、男を見る女の顔になっていたと申しているのです。

 あの2人は研究所では有名です。……近親相姦していると。実際に目撃もされていますのよ。

 確か昨日まで香織さんは東京の研究所に行っていた筈ですわ。こっちに帰ってきたのですね」


 ───あ~、そう言う事だったのか。


「浮かれてた自分がバカらしくなってきた……。僕は代わりだったんだ……」


 気付かない様にしてたんだけどな……。狩野守の記憶で飛燕の事は恋人だって認識してるけど、僕自身が好きなのは誰かって。


 でなきゃ、業務命令なんかで抱かれない! 零れ落ちた物を勿体無いって思って舐め取ったりしない! 自分から求めたりしない!

 それもより寄って妹って……。バカにしてるにも程がある。この前はたまたま妹が隣にいなかったから僕だったんだ。


「!!!」


 気付くと僕は安西さんにキスをされていた。舌を激しく絡ませたディープなキスを……。

 自然と吐息が漏れてくる。多分もう少しでスイッチが入るだろう。だから僕は安西さんの肩を掴んで顔を離した。


「もうすぐ僕のスイッチが入るよ。リバだからどっちでもいい。でも、今回限りでの事で僕は君の物にはなれないよ。

 それでも良いっていうなら続けてれば良い。拒みはしないから」

「それでも良いですわ。攻めさせていただきますね」


 本当はやっちゃいけないんだろうけど、多目的トイレに入って、安西さんにされるがままに身を任せた。


 蓋を閉めた便座に座らされてノースリーブのシャツはあっという間に剥ぎ取られた。そして、さっきのキスの続きから始まった。

 

「目、瞑らないのですね。ずっと見られてると恥ずかしいですわ」

「……目を閉じればすぐにスイッチが入ちゃうから。僕、結構声が大きいみたいだし」

「だったら私の家に行きませんこと? すぐそこのマンションですわ」


 僕はシャツを着ると彼女と共に彼女の家へと向かった。彼女の家はこのホテルの道向こうのマンションだった。




「確かに調教、開発させられてたね」

「言わないで下さい……。恥ずかしいですわ。正直言いますと、女性とするのは初めてだったのです。

 では、男性とはと言うとあの領事館だけですわ。

 それにしても……仁美様は神ですか? その完璧なプロポーション、仰向けに寝てるのに横に散らないオッパイ。なのにマシュマロの様な触り心地……、はっきり言ってズルいですわ」

「そんな事言われても……。僕を作った人に言ってくれないかな」


 何を思ったのか、安西さんは枕元に置いてあった灰皿のタバコを見つめていた。


「まさか、狩野って名字が気にはなっていましたが……」

「多分合ってると思うよ。安西さんの考えてること」

「M計画ですか?」


 僕はベッドから這い出て下着を身につける。


「そうだよ。狩野守の遺伝子と記憶を持って作られたバイオテクノロジーヒューマンだよ。幻滅した?」

「どっちですの?」

「えっ?」

「ですから、性転換研究の方かミトコンドリア研究の方かって意味ですわ」

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