小悪魔後輩と付き合う様になった話
スライム
第1話
「えーでは、今日からテスト週間に入る訳ですから、皆さん気を引き締めて、えー勉強に励むように。では日直、号令〜」
「うぃー、気をつけー、礼」
その声によってそれぞれ多種多様な声を担任の教師に浴びせ、全員が一斉に帰りだす。
「っしゃあ部活オフゥゥッ!!」
「カラオケ行こうぜカラオケ!!」
「俺これから合コンのセッティングするわ!!」
とまぁ、クラスの陽属性を持つ奴らは部活がオフになったことで自由を得た様で、何処かに遊びに行くようであった。が、陰属性を持つ俺、西宮蓮介は図書館にでも行って早速勉強をしようと計画を立てつつ、下駄箱に向かう。
「あ!! 先輩じゃないですか〜! 今帰りっすか!? 一緒に帰りましょーよ!」
「ん? 千崎か」
後ろからこっちに小走りで向かってくるのは千崎小春。地毛の明るい茶髪を背中の辺りまで伸ばした一個下の後輩だ。中学からの知り合いというのもあって千崎との関係は続いており、たまにこうして話したりする。
「これから何処行くんです?」
「図書館」
「うっわぁ…相変わらず真面目ですねぇ。だったらマック行って勉強しましょ! 証明問題とか教えて欲しいです!」
「えー…ヤダよ。だったらお前もっと他のやつに教えてもらえ」
「だって私の知ってる限り先輩が1番頭良いですもん。ほら、いいから行きましょ行きましょ!」
「あっ…! おいっ…!!」
逃がさないように強引に腕を組んで、俺は千崎に連行された。
………
……
…
「ぷはは! 先輩まだ彼女いないんですか!?」
「ほっとけ…。お前と違って俺はそういう相手がいないの」
健康という概念を知らない店、マックにて軽くポテトを食べ、多少の雑談を行いながら勉強をしていた。が、さっきっからコイツの俺へのイジリが止まらない。
「ぷぷぷー、先輩中学から彼女いないじゃないですか〜。このまま一生彼女なしの童貞で過ごしそうですね〜。もしくは悪い女に騙されてこき使われるとか」
流石に俺も聖人ではないため、イラッと来る所はある。昔からこんなふうに俺をからかってきて、後輩なりのスキンシップだと思って流していたが、最近はやたらめったら俺の彼女いない弄りが酷くなってきている気がする。
「んなわけあるか」
「仕方ないから〜、この私が彼女になってあげても良いんですよ〜? 情けなーい先輩にはもったいないくらいの相手でしょ?」
「お前に手を差し伸べられんでも自力で彼女作るっつうの。つかそんな見え見えの嘘に乗るか」
コイツの彼女になってやる、というのは信用性のかけらもない。千崎の性格上それは簡単に分かる。どうせ他のやつにもそんなの言ってんだろう。
「へぇぇぇ〜、でもそんな相手いるんですか?」
「………居る」
「ぷぷぷー! 嘘が下手くそですねー!」
嘘を簡単に嘘だと見破られてしまった。なぜだ、そんなにわかりやすいんだろうか俺の嘘は。
「お前さぁ…先輩いじって楽しいわけ?」
「超楽しいですよー。先輩っていじりがいがありますからね〜」
この悪魔が…。と内心思うが、それを口に出したら数倍の攻撃で帰ってきそうだから辞めておく。
だが、俺もやられっぱなしなのは本当に気に入らない。いつか反撃してやりたいもんだ。
「つかよぉ千崎…ここうるさくね?」
俺らが入ってきたときはそんなに混んでなかったが、今では子供が店内走り回ってて結構イライラしている。まぁこんな場所で勉強しようと思った俺も悪いんだけどさ。
「あははっ…いつもならこんな人居ないんですけどねぇ…。しかたないです。場所を移動しましょうか」
そう言ってトレーを持って席を立ち上がる。ゴミをゴミ箱にぶち込んで店内から出る。
「で? 何処に行くわけ?」
「私の家です!」
「……は?」
一時脳の処理が追いつかなかったが、すぐに回復して反射的に言葉を出す。
「いやダメだろ?」
「なんでですか?」
「付き合ってもない男女が同じ部屋で勉強とか…」
それを言うと、千崎はニヤニヤしながら俺の横腹を小突く。
「ふぅぅん。先輩ってば何やらしい事考えてるんですか〜? うわ〜、先輩ってば狼だー。襲われる〜」
「こんの…」
思わずキレそうになるが、我慢我慢。今のは俺が悪いわ…いや俺が悪いのか?
「ふふーん、冗談っすよ。先輩ってばそんなことする度胸とかないですからね〜。じゃあ行きましょ行きましょ!」
再び俺の手を強引に引っ張って、俺は千崎に連行されるのであった。
………
……
…
「おっ…おじゃまします…」
「堅苦しいですねぇ先輩。もっと自然体でいいですよ!」
何気に久し振りに入る気がする千崎の部屋。どうせ散らかってんだろうと思っていたら俺より綺麗に整えられており、部屋も女の子らしいものだった。
「じゃあ適当に座っててください。飲み物はコーラとオレンジジュース混ぜたものでいいですね〜」
「ふざけんな混ぜんじゃねぇ。コーラを所望する」
「はいあいさー」
千崎は部屋から出て、リビングからそれを取ってくる。その間暇になった俺はちょっとばかり部屋を物色する。
「何考えてんだよ…」
家には誰かいるんだろうと思っていたら、まさかの誰もいない。俺と千崎の2人だけだった。
そんな状況で付き合ってもない男を家にあげるとか………
(いやいやいや…何考えてんだ俺…。相手は千崎だぞ。あの小悪魔が具現化したような相手に何考えてんだよ…アホらしい)
首を振ってそんな考えを放り出すと、千崎がリビングから帰ってくる。
「はーいどうぞ。オレンジジュースでーす」
「………」
「ははは! 冗談ですよ〜。はいコーラです」
「……」
コイツ…! と声に出したい気持ちを抑え、出されたコーラを一口飲む。
「よし…んじゃ勉強始めるか」
ギアを入れて集中モードに入ろうとしたが。
「あーその前にですね、ちょっといいですか?」
「ん? どしたよ」
「うーん…ほら、なんとなく気付きません?」
千崎自身にどこか変わった変化はない気がする。部屋が変わった? いやそこまで変わってない。
うーむ、わからん。
「何がだ?」
「あはは、なんでもないです。忘れてください」
なんだよ…。そんな含みのある言い方をされたらすっげぇ気になるじゃないか…。
「なんだよ…言いたいことあるなら言えよ」
「いやぁいいですいいです! ささっ、数学でもやりましょー」
すっごく気になるが、まぁそこまで探求する必要も無かったので、俺は千崎の言う通り勉強を始めた。
そして、勉強を始めて三十分ほど。
「うーん…先輩、ここどう解くんですか?」
「っ…」
わざわざ俺のいる場所まで来て、ズィッ、と肩を寄せてくる。
「千崎…近いからもうちっと離れろ」
「えーでもわかんないんですよ〜」
「お前さ…俺も一応男なんだからもっと警戒心を…
あ」
口を塞ぐ。こんなこと言ったら、俺がそう言うこと考えるみたいに思われてしまうからだ。
だが、もうほとんど言ってしまった以上取り返しがつかん。
「あれれれぇ? 先輩ってばそんな事考えてたんですかー?」
「………うるっせ…」
「言葉にキレがないですねぇ〜。わー! 私そんな目で見られてたんだー! 怖ーい!」
絶対に本心じゃそう思ってない癖に、わざとらしく体をくねらせる。
あぁ…もうキレた。もうキレたわ。テメェがそのつもりならこっちだってやってやる。
「あーそんな目で見てて悪かったよ。こーんな可愛い後輩が家に誘って来たんだから期待してもじゃあねぇだろうが」
「……はい?」
さっきまでふざけてた千崎の顔が固まる。流石にキモいか? と思い、すぐにネタバラシを始め…
「じゃあ…します?」
その答えは、マジで予想外すぎた。
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