天の川越しの二人

宇佐美真里

イマドキのオリヒメ

明日七月七日は、七夕だ。

とは言っても、此所、仙台での七夕は来月の話。

天の川での逢瀬の日はひと月先のコトだ。


アイツが前回、こっちに帰って来たのは五月初めのコト。

過ぎてしまえば、あっという間だけれど、

日々待つ二ヶ月は、さすがに長い。


なのに…。

「仕事が長引いて、帰れそうにない…」だって?!

毎年七夕は休みを取って、「二人で一緒に…」と言ったのはアイツの方だ。

仕事だから仕方がないとはいえ、そんなンでいいのかっ?!


天気予報に依ると、明日の天気はあまり良くないらしい。

雨が降ると天の川の水かさが増し、織姫は川を渡るコトが出来ないが、

"イマドキ"の織姫はそうはいかない!


そもそも甘いのだ。

働き者だった織姫も彦星も、

あまりの仲の良さに機を織らなくなり、牛を追わなくなった…。

天帝は怒り、二人を天の川で引き離した。


"イマドキ"の織姫はそうはいかない!

時計の針は、九時を廻った。

ヨシ!片づけなきゃならない仕事の山は目の前からなんとか消えた!

タイムカードを押しながら、勢いよくワタシは言う。


「お先に失礼しま~す!明日は有給休暇を頂きま~すっ!!」


駅までは十五分。

東京行き最終、新幹線やまびこ七十号。二十一時四十七分発。

ワタシはもう一度、手の平のチケットを確認した。

まだまだ充分、時間はある。


待ってろヨ?!彦星!

どんな顔をするか…今から凄く楽しみだ!!

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