⑳夜、あの日の交差点(終)
目で探した。
なぜか、空港側は私が来ることも、滑走路で踊ろうとしていることも、知っていた。インカムだけ持たされたので、管制塔と通信ができる。
なんだっていい。踊れるのなら。
私は、世界的ダンサーだから。このために、世界的ダンサーになったのだから。
滑走路。
夜。
条件は、そろった。あの人がどこかにいる。
目で探した。
必死に。
ガラス張りの窓。
ひとはそんなに多くない。
どこ。
どこにいるの。
私は、あなたに愛されたくて、ここまで来たの。
おねがい。
私に見つけさせて。
あなたを。
管制塔。
『すべての準備が整いました。どうぞ。音楽も』
「いえ。必要ありません」
見つからない。
違う。
隠れてるんだ。
なら。
「あの、管制塔から私の声って、出せますか」
『はい。可能です』
よし。
「おねがいします。ひとことだけ、しゃべらせてください」
『どうぞ』
落ち着いている。振り向かないあのひとを、ふりむかせるんだ。
「わたしは、あなたが、好きです。四年前からずっと。今も」
ガラス張りの窓の向こう。
ひとりだけ、声を聞いて振り向いたひとがいる。
見つけた。
ようやく。
「今も。好きです」
足先から、指先まで。頭のてっぺんから、胸、腰、そしてかかとまで。
踊ろう。
あのひとのために。
もういちど、世界の中心を、ここに戻す。
オレンジの明かり。月の光。コンビニの看板はないけど、ガラス張りの窓はある。
全てを込めて。
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