第12話 状況証拠で決めつける時は脳内設定入ってるよ。

「王様が変わったなんてビックニュースですよ!!」


 リリアンは驚愕の声を上げた。

 それもそうだ。

 俺は微塵も興味はないんだが……? そんなに興味ある?


「でも、もうちょっとカッコいい人がいいかも……」


 おいっ! リリアン、そういうのボソッていうの本音っぽくなるからやめろ!

 一番傷つけるから!

 ほら、少しぷるぷるしている。

 流石に王様も怒っちゃうよ!? 不敬罪になっちゃうよ!?

 俺は話題を変えるために割り込む。


「グラタン、急にぷるぷるするダイエットでも始めたのかな?」


 俺は目の前の子豚……いやグラタンを軽く弄ってやったのだ。

 ……ってあれ? 顔が引きつってる?

 もしかして、グラタン呼びもお気に召さない? ハムも駄目だとするとなんて呼べば……?


「フェルナンドもリリアンも礼を知らぬ愚か物ね……子豚にだって言ったら失礼な事があるのに。」


 お前が一番失礼じゃ!

 マーズのやれやれという態度にいらっときてしまう。

 ふっ、しかし、こいつはお子ちゃまだからアイスブレークって言葉を知らないのだろう。


「ふーーーー!」


 突然、グラタンが大きな息を吐き出した。

 プうプルは止めているようだ。


「して、フェルナンドさん。」


「ん? 何?」


「魔王の子供を捕らえたという話を聞きました。それは今はどこに?」


 俺は視線をマーズに送る。


……


 グラタンハムは首を傾げただけだ。


 いや、俺のアイコンタクトで分かれよ!!

 察しが悪い奴だ。


「マリトッツォ王、その娘が魔王の子供です。」


 大臣に耳打ちされて、あぁって顔をしてやがる。

 

「このような小娘が魔王の子供……?」


 今は俺が魔法を封じているからただの小娘だが、実際に魔力があったら、それなりに厄介だぞ。

 特級魔法を一回撃つくらいの魔力も使えるからこの城を壊すことだってできるんだぞ?

 見た目で判断するのは愚かというものだ。


「ワタシが小娘だって~!? この子豚、すっごく失礼!!」


 おい。またグラタンハムがぷるぷるしちゃうぞ!?

 争いは同レベルでしか起きないってね。


「正真正銘ワタシは魔王の娘よ!!!」


 ドンって効果音が見えそうなくらい断言しやがった。

 お前、ここは敵の本拠地ってわかってる?


「……水龍は貴方の部下ですか?」


 ん? 何その質問? 関係ある?


「部下じゃない! 友達よ!!!!」


「…王が死んだ直後に水龍が出現し、同時期に魔王の娘の登場した。うん。状況証拠は十分です……」


 何やら勝手に納得してやがる。

 

「なんの?」


 ぶつぶつと気持ち悪く呟くグラタンハムに俺はきく。


「この娘はガストロリンド王の殺害の犯人という事のです。」


「マーズが王を殺害……?」


 いや、ちょっと待て……マーズは阿保だが、人を殺すような奴じゃ……

 いや初回に水龍の仇を殺すとか言ってたな。

 やりかねないかもしれん……


「えっ!?」

 

 マーズ本人は口に手を当ててマジで!?って顔してやがる。

 あっ、こいつに王殺しは無理だわ。


「もしかしてワタシ人族に勝っちゃったの?」


 勝ってない。勝ってない。

 目の前に新しい王様がおるやん。


「マーズちゃんが王様を殺害する理由なんてないですよ!? ほら、フェル様も擁護してください!」


「まぁ、確かにな。マーズの阿保には王殺しなんて出来やしないだろうな。」


「しかし、状況証拠的に考えると、この魔王の娘が王を殺し、水龍でその情報を隠蔽したと考えると非常に辻褄があうのです。」


 それは、辻褄っていうかこじ付けじゃなねーかな?


「まぁ、マリトッツォ、落ち着けって。そもそも『魔族が犯人』って情報がわかってるなら犯人も大方の絞られてるんじゃねーのか?」


 おっ、マリトッツォは怒らないのね。


「いえ、犯人が魔族というのは……知らぬ内に犯行が行われたという状況証拠からでして……一切の検討がついていませんでした。」


 ええぇ……

 さっきからの状況証拠、状況証拠って、何も知らないって事じゃん。


 ん? でした? なんで過去形?


「今、ここに犯人を見つけることができたのです。」


 マリトッツォの目はマーズをしっかりと捉えている。

 こいつ、状況証拠だけでマーズを犯人って断定してやがる。

 いや口は悪いけど、


「ちょ、ちょっと!! ハムちゃん! マーズちゃんを犯人って決めつけるの止めてください!!」


 ハムちゃん???

 君の距離の詰め方バグってない?


「ふむ。もしかしたら、ワタシは遠くにいる者を殺す力を目覚めさせてしまったのかも……」


 マーズ??? わなわな震えて掌見つめて、君、どうしちゃったの?

 厨二病も良いけど、ここでそれを言っちゃ駄目じゃない?

 そういのは帰ってから言おう?

 リリアンがかばった意味ないじゃん。 


 はぁ……こいつら駄目だな。有能な大臣はそっぽ向いてやがるし。

 しかたないフェルナンド動きますか、


「リリアン、マーズ、マリトッ……言いにくい!!!、ハム太郎、ちょっとは落ち着け!」


「ハム……」


「いいか? マーズ、念じただけで人を殺す能力なんてある訳ない。ハム太郎もちゃんと証拠集めてこいよ。少なくてもマーズが破人は強引すぎるだろう。状況証拠だけで犯人を決めるな。」


 喝っ!

 これで落ち着けば……


「ええい!! まどろっこしい!!!! この娘が犯人で決まりなんだ!!! ひっ捕らえろ!!!!! 証拠は後から埋めればよいのだ!!!!!!」


 ハム!!!!!!!!!!!!!!! この、テメェ……!!!!

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