第2話

「いってー」

 衝撃と共に机が大きく動いた。去年の夏のことを思い浮かべていたら,いきなり大本君がぶつかってきた。大本君は私に背を向けて,大きな声で言った。

「何すんだよ。ぶつかったじゃねえか。」

給食を食べ終わり,休み時間になった教室はがちゃがちゃしていた。

私は大本君を睨んだ。

「なんでそこに立ってるの?」

「今日出された国語の宿題,済ませてしまいたいんだけどよく分からなくて聞こうと思ったんだよ。そしたらあいつがぶつかってきてさ。」

大本君はいつも教室でふざけてバカみたいにじゃれあっている。そして,冗談のつもりでちょっかいを出し合っていたかと思うと,すぐにけんかになる。ほんと,よくわからない。

 授業プリントを私の目の前に突き出して,大本君は言った。

「これ,どういうことなの。『をかし』を使った一文を考えて書きなさい,だって。お前,国語得意だろ。まじでわけわかんない。」

 私だって本当にわからない。小学生の頃から本当に疑問に思っている。どうしていつもわたしのところに宿題を聞きに来るのか。なんで係まで一緒なのか。なんで野球部なのに,先輩のような雰囲気がないのだろうか。

「わかんない。自分で考えなよ。」

 掃除時間のチャイムが鳴り響き,教室から机を運ぶ音がガタガタと聞こえてきた。私は大本君を押しのけて,掃除場所へと向かった。

 あんなやつと関わっている暇はない。今日こそは,声をかけると決めているのだ。廊下に貼られたインフルエンザ防止を啓発するポスターを眺めるふりをしながら,隣のクラスから真由が出てくるのを待った。

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