第14話 くじ運
「いっせーのせ 2! よっしゃーーーー!」
「ぬぉーーーーー。なぜだーーー俺の完璧な作戦がーーーー」
「はいはい。んじゃメロンパンは克哉の奢りな」
「くそー。解せん」
SA(サービスエリア)内のお店の前で颯ちゃんが大袈裟にガッツポーズをし、克哉くんが悔しがる。
周りからは、イケメンと言われる2人が、SAの店前で大袈裟に叫ふと気付けば、必要以上に視線が集まっている。
うん。
恥ずかしい……。
最初の休憩地点であるSAに到着し、お手洗いから戻ると、すで2人は勝負を始めていた。
最初は肉まん、そして焼売と続き最後の勝負は4人でメロンパンとなった。
その勝負の結果が出ての行動だ。
2連敗していた颯ちゃんは喜びを爆発させ、4人分のメロンパンを買うことになった克哉くんが悔しがり、私と雪那ちゃんがそれを見て笑う。
こんなに楽しい記憶は、もちろん前の私にはない。
「はいはい、店の前で騒がないの。それより克哉くん。メロンパンご馳走様」
「ごめんね。克哉くん」
「くそー2連勝して調子良かったのに。了解。まっここのSAと言ったら上りも下りもメロンパンだしな4つ買ってくるわー」
ここのメロンパンはよくグルメ番組でも紹介される。実は、ここにきたら食べてみたいと思ってた。
「それにしても、颯真くんも克哉くんもよく食べるよね」
雪那ちゃんが、颯ちゃんの両手に持った肉まんと焼売を見ながら感心した様子で、颯ちゃんに話を振る。
颯ちゃんは、勝負の間袋にしまっていた肉まんと、焼売を再び出して、頬張っていた。
「ん?そうか?雪那も食べる?ここの焼売マジうまいよ。ここの名物」
「ここの焼売って横浜名物の焼売でしょ!いくら私が長野県民だって横浜の焼売くらい知ってるんだからね!もぅ。でももらう」
雪那ちゃんが、パクッと颯ちゃんが差し出した楊枝の先の焼売を食べる
「ぁ……」
と小さく漏れそうになる言葉をなんとか止めた。
恋人同士なら当然のことだ。
車を降りてから、隣同士になれなかった時間を埋めるように、常に颯ちゃんに寄り添う雪那ちゃん。
そういう姿に対して、ふとした瞬間に意識してしまう。でも今の私は何も出来ないし、邪魔もするつもりはない。
前とは違う今を、精一杯過ごすって決めたから。
「出来立てゲットー」
克哉くんの陽気な声で、意識が現実に引き戻される。
無事メロンパンを買えたようだ。
時間はちょうど8:30。ちょうど焼き上がったばかりだから出来立てが買えたんだね。
「はい。春ちゃんの分ね」
「ありがと。克哉くん」
「おう。次のSAでリベンジだ!と言うことで食べながら出発するぞー、ほらそこ!焼売でイチャイチャしない!」
克哉くんが、颯ちゃん達2人をビシっと指差す。
「なっ。してねぇよイチャイチャなんて」
「フンっ。彼女にあーんなんてしやがって、ボッチで並びながらその光景を見せつけられる俺と、間近で見せつけられる春ちゃんの身になりやがれ。このリア充どもめ。なっ春ちゃんもそう思うよな」
えっ?そこで私にふるの?
もう克哉くんのばかっ。
***
「せーの!」
「あーーー私が1番だー」
克哉くんからの無茶振りからなんとか逃れ、再び車の前で皆んなで一斉にくじを引く。
次の助手席は雪那ちゃん。また颯ちゃんと隣同士になれなくて、あからさまにがっかりしている。
そう。これが克哉くんのウィンクの意味だ。
3本のくじを引いて、たしかに3本中2本で克哉くんの隣には私か雪那ちゃん。つまり女の子が座る。
しかしこれは、克哉くんの建前だ。
私へのウィンクの意味……。それは颯ちゃんと雪那ちゃんそれぞれが助手席になる確率も3本中2本なのだ。
颯ちゃんが助手席になっても、雪那ちゃんが助手席になっても結局は雪那ちゃんの望む颯ちゃんと隣同士になれない。
今回のように。
もう。変に気を使わないでよ克哉くん!
ここから次の目的地、高坂SAまでちょうど1時間。
それまでは私は颯ちゃんの隣だ。
***
道中、また有名なSAを巡り、その度にクジを引いた結果。
待ち合わせの駅から海老名SAまでは颯ちゃん。
海老名SAから高坂SAまでは雪那ちゃん。
そして高坂SAから横川SAまでが颯ちゃん。
横川SAから松代PAまでも颯ちゃん。
そして最後の松代から雪那ちゃんの実家までが、私が助手席のくじを引いた。
各サービスエリアまでは大体60分くらいだった。さすがに颯ちゃんが高坂SAと横川SAの2回。つまり5回のくじのうち3回助手席を引いた時は、雪那ちゃんがあからさまにショックを受けていた。
うん。さすがに可哀想かな。昔から颯ちゃんくじ運ないもんね。
ちなみに、各サービスエリアでの勝負の結果、海老名SAでメロンパン。高坂SAで抹茶のお菓子。お昼の横川SAで有名な陶器の釜に入った本格的な釜飯。最後の松代PAでおやきと、各サービスエリア、パーキングエリア名物を頂いた。
と言っても高坂SAから、颯ちゃんと克哉くんのどちらが4人分払うかの勝負になっていた。
ホント2人とも男の子だな。
途中雪那ちゃんが冗談でむくれるも、実家までの道では私が助手席を見事に?引き、颯ちゃんと最後に隣になって機嫌が良くなっていた。
そして車は目的地であるペンションへと到着した。
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