第30話 問題
あれから、20日が経った。
さすがは、プロだ。
追加で発注した、貯水槽も汚水槽もしっかり出来上がり、配管も出来ている。
「すごいですね。考えていたのとほぼ同じ感じにできてます」
俺は、ドンクさんと屋根からハシゴで降りながら言った。
「まあな。だが、お湯を出したり止めたり出来る仕組みってやつか?あれが上手く考え付かなくてな」
「そうですよね。そう簡単にはできませんよね・・」
蛇口が無い世界で、いきなり作れって言ってもなあ・・。
「で、はじめは管も木製でいこうと思ってたんだが、色々やっているうちに金属の方がいいだろってんで、こうなったんだ」
確かに、配管は真鍮製の管が壁から出ている。
なぜかこの世界、金属加工技術はけっこう発達しているんだよな。
「これはどうやって作ったんですか?」
「このくらいなら、村の鍛冶屋でもできる。だがな、さっきも言った通り例の仕組みがなあ」
そういうことか、だからここで工事がストップしているのか。
蛇口の仕組みまでは、流石に俺にも分からないしなあ。
「で、10日ほど前に領都に使いを出した」
「領都に?」
「ああ、領都にいるダンク兄貴なら、何とかしてくれるんじゃねえかなと思ってな」
「なるほど!」
「それに、坊主に貰った銀塊を換金するのに丁度よかったしな」
そう言えばこの間、設計変更をお願いした後に、追加で100万セム分の銀塊を払ったんだったっけ。
「領都までは、この村からどれくらいかかるんですか?」
「そうだな・・10日ってところだな」
「じゃあ今頃は、領都に着いているころですね」
それから話を聞いて、構造を考えて、製作してだから・・なんだかんだであとひと月くらいかかるのかな?
「ああ。だからその間に他のところを進めているところだ」
「ええと、じゃあ脱衣所の方なんですが、こんな感じで壁に棚をこういう風に区切ってですね・・・」
俺は、細かな仕様の希望をドンクさんに説明していった。
それから10日後。
「2階のお休み処なんですが、こういう感じで『小上がり』って言うんですけど、1段高い床を作ってもらえますか?」
「変な造りだな」
診療所もこっちに移し、診療の合間にドンクさんと話し合いながら内装を進めていた。
「ドンクー!どこだー!!?」
その時、1階の入り口の方から声が聞こえた。
誰だ?
「ん?あの声は!」
ドンクさんの顔がひきつっている。
「どうしたんですか?」
「ドンクー!!」
「なんで、わざわざ来るかなー・・」
ドンクさんが仕方ないといった態で、階段の方へ向かっていく。
「わかったよ。今行くから、大声でわめくな!」
階下へ向かって、大声で叫んだ。
なんだろう?
俺は、ドンクさんの後について階段を降りて行った。
「おう、ドンク!来てやったぞ!!」
「べつにわざわざ来なくても、物さえ送ってくれれば・・・」
「何を言ってやがる!こんな面白そうなこと、お前だけにやらせるわけにいかねえだろが!」
「ったく・・これだから、相談したくなかったんだ・・」
目の前には、ドンクさんが2人立っていた。
瓜二つ、そっくりな顔で背格好、まさかこれは・・。
「おう!坊主がマモルって奴か!ドンクが世話になってる!」
一々、感嘆符つきのしゃべり方だな。
「そ、そうです。もしかして、あなたはドンクさんの・・」
「双子の兄のダンクだ!」
やっぱり。
「ドンクが、なんか面白そうな仕事を受けたって聞いてな!すぐに領都を発ってきてやった!」
「そ、そうなんですか。あ、ありがとうございます?」
「がははは!まあ、大船に乗ったつもりで任せろ!!」
「は、はい。よろしくお願いします・・」
「はあ~・・・俺の現場が・・」
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