第24話 相談


「みなが入れる様な、大きな風呂をのう・・」


ミミにおねだりされて、村長のところに来た俺はどうしたらいいのか相談してみた。


「それは、タライや樽と同じように木で作るのかの?では木工職人かのう・・」


「ええ、ただ大きさが相当違うので、どちらかというと大工さんがいいかもしれません」


よく考えてみれば、やっぱりみんなが入れる様にするんだったら、銭湯的な感じでちゃんとした建物があった方がいいと思ってきたのだ。


「それじゃったら、大工のドンクじゃな」


「ドンクさん?」


「ああ、ドワーフでな。あの爺さんなら腕も申し分が無いじゃろ」


村長に爺さん呼ばわりされるって・・。


「じゃがそうなると、資金が必要だの・・」


「ああ~、そうですよねー」


結構お金は貯まってきたけど、たぶん足りないだろうしな。


どうすればいいだろう・・・。


「あのう、銀塊とかの鉱物で支払うって可能ですかね?」


「ん?おお、そういえば持っとったな。そうじゃな、確かドンク爺さんの兄のダンクが領都で鍛冶屋をしとったはずじゃから、大丈夫かもしれんぞ」


やった!


これでなんとかなりそうだぞ。


「じゃあすいませんが、ドンクさんを紹介してもらえますか?」


「ではこれから行ってみるか」


「お願いします」


「ミミも一緒にいっていい?」


「ああ、よいぞ」


「わーい!」




ドンクさんの工房は、村はずれの丘の上にあった。



「ドンク爺さん、ハサンじゃ。入るぞ?」


建物の前まで来ると、ハサンさんが声をかけた。


そして返事を待たずに、建物の外見の割に重厚な、木の扉を開けて中に入る。


中に入ると、外からは分からなかったが2階建てとなっており、1階は工房スペースで上階が居住スペースになっている様だった。


壁には色々な道具が掛けられており、床には制作中の何やらが所狭しと並んでいる。


「誰かと思ったら、ハサンの坊主か」


「そう言ったじゃろ」


ハサンさんが坊主?


長寿種族あるあるか?


「そっちは見ない小僧だな。イーサンか東島の出か?」


俺のお腹の辺りまでしか無い身長ながら、鋭い眼光で睨んできた。


「は、初めまして。マモルといいます」


「マモル?たしか、東島にそんな名前があるらしいな」


へーそうなんだ。


いつか行ってみたいな、東島。


「ドンクじいちゃん、こんにちわー!」


「おうおう!ミミちゃんではないか!相変わらず可愛いのう」


さすがだ。


うちの小悪魔は無敵だな・・。


「ミミちゃん、今日はどうした?」


「んとね、お風呂作ってー!!」


「おふろ?」


「うん!おっきなお風呂ー!」


「聞いたことないが、どういうことだ?ハサン坊」


それまでこれほど崩れるかというほど、相好を崩していたドンクさんが、真顔に戻ってハサンさんに聞いた。


「じゃから、その呼び方はやめてくれんか。もうこれでも、75じゃぞ」


「75なぞ、まだまだ赤ん坊よ。ワシは250だ」


比べる方が、おかしいよ。


「しかたないのう・・。実はこちらのマモルさんがの、風呂というものをこさえてくれたんじゃが、村中で評判になっての。今度は、それの大きなものを作りたいんじゃが、自分たちでは無理じゃからドンク爺さんにお願いしようと思ってきたのじゃ」


「作ってくれって言うんなら、やらんでもないが。だいたいその、ふろというのはどういう物なんだ?」


「えーとですね・・」


そして、俺は風呂について説明するために、収納魔法でタライをストレージから取り出した。


「ただのタライではないか」


「これにですね・・」


今度は、そのタライにお湯を溜めていく。


「できました!じゃあ、これに服を脱いで入ってみてください」


「なに?!ワシは行水はあまり好きじゃないのだが・・」


「お行水じゃないもん!」


「そうなのか?」


「そう!入ればわかるよ」


「ん~。ミミちゃんが言うなら仕方ないな」


「うん!入って入って!」


「じゃあ・・・よっこらせっと・・・うぉー!なんじゃこれは?!」


「どうです?」


思わず雄たけびを上げた、ドンクさんに聞いてみる。


「気持ち良すぎるぞ!」


「でしょう?これで、一杯やりながら入ると、これがまた堪らなくいいんですよ!」


「なんだと?!その机の上の瓶を取ってくれ!」


「その前に、風呂の良さが分かったところで、お願いの件なんですが・・・」


「分かった!作る!何でも作る!だからその酒を取ってくれ!!」


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