第23話 小悪魔の遠大な計画



当然といえば当然なんだけど、ドリンさんはほぼ露天で風呂に入っていたわけで・・。


村中に評判が広まり、10日後には主だったお金持ちの家を周って、風呂にお湯を入れて行くのが日課に加わった。


村長のところを入れて、都合10軒の家を周っている。


治療費と合わせて、日に4~5万セムの収入だ。



「でも、こんな田舎だとほとんど使い道は無いんだけどね」


ミミに、屋台で砂糖菓子を買ってあげながら独りごちる。


なぜか、砂糖は普通に流通している不思議・・。



「おいしいねー」


「そうだな」


俺にはちょっと甘すぎるけど。


そもそも、砂糖と小麦粉と卵白を混ぜて固めただけという、シンプルというかあまりに素朴なお菓子は、日本の多彩なお菓子文化の中で育ってきた俺には、物足りなかった。



「ねえ、マモルおにいさん」


「なんだミミ?」


お菓子を食べ終わったミミが、俺の顔を見上げて言ってきた。



「この間、お友達が遊びに来たときにね、お風呂に一緒に入ったんだ」


「そうなんだ」


「でね、とっても楽しかったからお友達がね、おうちの人に自分のお家にもお風呂が欲しいって言ったんだって」


「へえー」


「だけど、うちにはそんなお金はないからダメって言われたの」


まあ、日に3000セムも払い続けられる家は、そうそういないよな。


ましてや、たまにってことになったら、そのためにわざわざでかいタライを用意する余裕も無いだろうし。



「それとね」


「まだあるのか?」


「お友達、3人で入ってたんだけど、ちょっと狭かった」


そりゃあ、もともとがただのタライだからな。



ん?


ミミが、上目遣いで見ている。


「む・・」


お前、どこでそんなテクを・・・。


安くて大きな風呂ねえ・・。



「銭湯とかか?」


「せんとう?」


思わず呟いた言葉を、小首を傾げてミミが繰り返す。



「ん?あ、ああ。昔、俺が住んでたところには、銭湯というのがあってな」


でも、銭湯を作るのはさすがに無理だよな。


だいたい、銭湯レベルの浴槽って作れるのか?



「せんとうだと、お友達みんなで入れるの?」


「いや、銭湯はとりあえず別にしてだな、とにかくもっと大きな風呂を作れればな」


「ミミ、せんとうに入りた~い!」


「だから、大きな風呂な」



しょうがない、村長に聞いてみるか。




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