第7話 お金がない!
異世界初の夜を快適に過ごすことができた俺は、与えられた客室のベッドで異世界初の朝を迎えた。
「おはようございます」
「おお、おはようございますじゃ。よう眠れたかの?」
「おはよう、マモルさん」
「おはようございます、マモルさん」
「おはよう!マモルおにいさん」
ベッドから起き出して居間へ行くと、もうみんな起きて朝食の用意をしていた。
「ええ、びっくりするくらいよく眠れました」
俺は、駆け寄ってきたミミの頭を撫でながら、ハサンさんに答えた。
「そう、それは良かったわ。もうすぐ朝食が出来ますから、顔を洗って来てくださいな」
ミーナさんが、忙しくキッチンと居間を行き来しながら言ってきた。
「もう、体調は大丈夫なんですか?」
キビキビ、いきいき働く姿を眩しく感じながら、聞いてみた。
「ええ、もうすっかり。本当にありがとうございました」
「そ、それは良かったです」
「ねーマモルおにいさん、はやく食べよー」
「そうだな。じゃあいただこうか?」
今朝の朝食は、ハムエッグにパンとオニオンスープだった。
これも結構うまかった。
「ところで、この村に旅館とか泊まれるところってありませんか?」
食事も終わり、ハーブティの様なものを飲みながら寛いでいる時に、ハサンさんに聞いた。
「旅館?なんじゃそれは」
旅館だと通じないのか。
「ええと、要するに泊まれるところです」
「おお、宿のことか!それなら、1軒だけありますぞ」
良かった!
このままこの家にお節介になるわけにいかないし。
「それはなんていう宿ですか?」
「ベイルの宿と言いますじゃ」
これで、寝床は確保できるな。
「確か・・1泊2食付きで3000セムだったかの?」
ハサンさんが、ミーナさんを見て言った。
「そうよ、あそこは料理が美味しいから、おすすめね」
3000セム?
言っていることからして、お金の単位だよな。
まずいぞ!
俺、この世界のお金を持ってないや。
「あのう、じつは俺、この村に来る途中でお金を無くしちゃいまして、何かお金を手に入れる方法ってありませんか?」
俺はできるだけ、冷静を装ってハサンさんに聞いてみる。
「なに!それはいかんの。本来なら娘の治療費をお支払いせねばならんのじゃが、1泊や2泊分ならともかくそれ以上はなかなかの・・すまんことじゃが・・」
「いえいえ!そんなつもりで言ったわけじゃないんで、元々お代を頂こうなんて思っていませんし。それに泊めて頂いたお礼でもありますし・・」
俺は、慌てて両手を突き出して振った。
「なにをおっしゃる、お礼をするのはわしらの方じゃ」
「そうよマモルさん、私もこんなに元気になれたし、ミミの怪我も治して頂いたし。でも困ったわね・・・そうだ!雑貨屋さんで持ち物を売るというのはどう?」
ミーナさんが、手をポンとたたいて言った。
「おお、そうじゃな。何か売れそうなものを持ってはおらんかの?」
持ってる物かあ・・定番の今着ているスーツに靴と・・。
俺はポケットを探ってみる。
ハンカチにポケットティッシュ。
「あ」
財布があった。
でもこの世界じゃ使えないか。
ろくなものがないな、どうしよう。
「これなんかどうですかね?」
俺はとりあえず、ハンカチとポケットティッシュをテーブルに並べた。
財布はこの世界でも使えそうだし、なんか勿体ない気がして。
「この四角い布は、仕立ても良いし売れるじゃろうが、こっちの薄い紙はなんじゃ?こんなに薄いとペン先が引っかかって、使い物にならんじゃろ。この透明なものも、なんだか薄気味悪いのう」
ハサンさんが、ポケットティッシュをつまんで顔をしかめた。
こっちの世界だと、そういう反応になるのか。
「この布は、いくらくらいになりそうですかね?」
ハンカチを指して聞いた。
「そうじゃの、ものが良いから10000セムくらいかの」
「そ、そんなに!?」
駅のキオスクで、慌てて買ったやつなのに、そんなになるのか。
「でも、それだと3日分ですね」
う~ん、どうすれば。
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