第15話 ノリッチの日常1
現在は宿屋でミーティングを開いている。
「ラーデル君、私達も少しだけ身体強化が出来るようになってきた気がするよ」
「私も無詠唱魔法のコツが少しだけ解って来た気がします」
mass-crimsonの面々も以前より強くなってきたようだ。
《ふ、まだまだ全然ですね》
イルデストに鼻で笑われてしまった。
実際には俺はギルドレベルが上がる毎に、爆発的に強くなっているようだ。
以前、仲間の武器に魔法付与を試してみたけど、魔力差が大きいと上手く扱えないようだ。
なので、街で買える装備を充実させていった。
今では金属鎧装備も装備している。
騎士じゃないから、動きに支障が出る全身金属鎧は着ない。
ハントに邪魔になるから、部分部分に装備が出来る物に限られる。
装備としたら、一応合格点かな。
皆の装備を眺めながら、思いを馳せる。
生前の世界にはパワーアシストマシーンってのが有ったっけ。
土魔法でゴーレムを応用したパワードスーツが作れれば、俺の力に匹敵出来るんじゃ?
「ラーデル君、何ぼくらに見蕩れてるんだよ」
「ええ? とうとう色気づいたとか?」
「ふふ、やるねえ、ラーデル君」
「私はそういう目で見られるのは嫌ですよ」
「あ、そんなんじゃないですよ」
パワードスーツの構想を語ってみた。
外殻で防御力を確保して、筋力をアシストして増幅出来れば。
「運動能力を更に向上させる鎧ですか」
「機械的にってのが良くわからないけど」
「魔法付与とは違うの?」
「あたしはそういうのが在ればもっと有利に戦えると思う」
「じゃあ、ちょっと試作してみますか」
土魔法を駆使して、体に装着する外骨格パーツを作ってみる。
中々思うように行かないものだ。
一週間ほど試行錯誤しながら、パーツを作り、組み上げては変形調節をして四苦八苦した。
関節部に梃子原理で出力部位を何とか出来れば。
だけど凡庸な一般人の思考じゃ完成しなかった。
願う物と物理的に作る物じゃ、現実は大きく乖離している。
約二倍の力を出せても、本体の自重で力が相殺されてしまう。
そんなのじゃ、単なる鎧の方がましだ。
「ゴーレム単体なら出来ない事もないんだけどな」
ゴーレムの中にすっぽり納まるようにするにしても、mass-crimsonの面々じゃ操作する魔力が圧倒的に足りない。
「mass-crimsonさん達、宿屋の中に変な荷物増やさないでくれんかね」
女将のチェレーナから苦情が来る始末。
試作品の数々を防具屋に売り払う事にした。
荷車を借りて防具屋に運び、査定してもらう。
ガラクタになっちゃったけど、一応鎧っぽく見えるか。
「変わった鎧ですだな」
「ええ、勇者の鎧というか」
「だから勇者じゃない私達には使えないんですよ」
「うーーーーん、銀貨二枚でどうだや?」
「銀貨二枚!?」
「もしかしてグラムいくらの値段かな?」
随分足元を見られたようだ。
本当に勇者が来たら、いくらで売るつもりなんだろ。
とにかく、置き場に困るガラクタが銀貨二枚になれば上々という所か。
「ラーデル君、結局駄目だったね」
「さーせん、アイデアだけじゃ俺には無理だったようで」
「やっぱり冒険で伝説のレアアイテム探す方が現実的だったようだね」
「まあ、ラーデル君には数々の魔法だって有りますし」
「当面はこのままで大丈夫でしょ」
皆はあまり残念そうじゃないようだ。
つか、最初から期待していなかったと言うか。
「そういえば、あたしこの間、滅んだポルダ村の噂を聞いたよ」
「実在したんだ」
「いや、俺は嘘言ってねーし」
かつて流通していた椅子・炭・陶器は、幻のブランドという事で高額で取引されているらしい。
そのため偽ブランドも結構流通してるとか。
俺にとっては忌まわしい記憶だ。
それらを作り出したせいで村が襲われ、滅んだのだから。
取り合えず冒険者ギルドに行き、今日の依頼票を探す事にする。
俺達mass-crimsonは有名冒険者の仲間入りをしている。
話に聞くところ、この街には金ランクはまだいないらしい。
と言うより金ランクは王都に行かなければ、受けられないそうだ。
「今日は目ぼしいクエストが無いから、剣術の稽古でもしようか」
俺はロザベルとルグリットからよく剣術を教わっている。
彼女達からすれば、俺から魔法を教わるお返しだと言う。
そもそも俺は力はあるけど、正式な剣術は素人だからね。
この世界の剣術はロングソードと鍔迫り合いをすると不利になる。
「見本を見せるから、上段の剣を防いでみて」
ロザベルの振り下ろしを剣で受けても、ロザベルは剣の持ち手を上げて突きに来る。
「これが「
他にも受けたらKick To The Groinで蹴り飛ばされたり、
剣の間合いに入られ脚に腕を滑り込まされ、肩で押され後ろに倒されたり、首に腕を掛けられ倒される技がある。
「これが「
ロザベルの上段振り下ろしを受けても、次の瞬間首筋に剣を当てられる。
実戦的なんだろうか、剣が迫れば反射的に受けざるを得ない。
しかし受けたが最後、次の瞬間に突きが来る。
実戦では、鍔迫り合いをしたら即負けが決定する。
力負けをする云々じゃなく、受け流されて急所に相手の剣が来る。
「はあ、剣術って凄いですね」
「力任せに剣を振るラーデル君じゃ想像もつかないだろ」
「まあ、ラーデル君の場合、その力任せが凄いんだけどな」
そう言われれば、受けに回らなければ良さそうな気もする。
実戦の場じゃそうもいかない時も、多々あるんだろうな。
正直瞬発力はあっても持続力の無い俺には、即座に決める事が出来る剣術はありがたい。
ある程度打ち合っても、しばらく相手の手を探るようにして休憩すればいいのだ。
魔術師のヘルミーネからは、魔法書を見せてもらった。
羊皮紙の分厚い本で、代々の魔術師達が開発した魔法や呪文が書き溜められている。
「こんなに沢山の呪文をヘルミーネは覚えていくの?」
「私でも全部を暗記するのは無理ですね」
だから魔術師はこういう分厚い魔法書を持ち歩いてるのか。
「ラーデル君の無詠唱魔法を私が、書き足して行く事になりますね」
そうは言うけどヘルミーネは、原理がまだ解らないと言う。
正直俺も原理なんて解らないけど、全てはイメージングの産物だし。
だから原理なんて教える事が出来ないでいるし、ノウハウも無い。
「ほんと、ラーデル君に魔法を教えたお爺さんってどんな賢者なんでしょ」
ヘルミーネは溜息混じりに羨望を洩らす。
お爺さんってのは嘘です。
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