第11話 冒険者パーティー

11「冒険者パーティー」




 俺は初依頼達成してから、ソロ活動で薬草採りやウサギっぽい奴とか、カエルっぽい奴とか、色々な魔獣や野獣を狩り続けて冒険者ギルドのレベルも上がってきた。

 最初は銅ランクFレベルだったのが、今では銅ランクDレベル。

 駆け出しから、初級冒険者になったと言う所か。


 冒険者ギルドでも顔馴染みになってきた。

 そうなると冒険者パーティーの誘いも、ぼちぼち来るようになる。


「ねえ、君、もっと稼ぎたいと思わない?」


 女性ばかりのパーティーから誘いが来た。

 俺がまだ少年だから誘ってくれたのかも。

 冒険者もソロで依頼をこなすより、人数を集めればより強い魔獣を相手に出来るし、人数が増えれば、強い魔獣と当っても生還率も上がる事になる。

 強い魔獣ほど換金率も大きくなるから、パーティーを組みたがる者は多い。


 実力差が有りすぎると足手まといになりかねない。

 だからパーティーは、ほぼ平均的レベルに揃えるのが鉄則だ。

 冒険者ギルドの等級は、判断材料になる。


 誘ってくれたのは、 冒険者レベルは皆、銅ランクBレベルらしい。

 俺は銅ランクDレベルだから、実力差は小さいと踏んだようだ。


「お願いします、ラーデルと言います」


 決してお姉ちゃん達の色香に誘惑されたんじゃない。

 レベルが近いって事と人数が多ければ有利になるんだから。


「こちらこそ宜しくね、私達のパーティー名は『Mass-Crimson』よ」


 ……何だか凄いパーティー名だな。


 実力的にはどうか知らないけど。

 俺は一応剣士扱いになっている。


「私はロザベル、剣士だ、宜しくな」

「ぼくはルグリット、同じく剣士」

「あたしはデルハイケ、アーチャーよ」

「私はヘルミーネです、魔術師やっています」


 この世界は15歳が成人らしいから、皆成人女性なんだろう。

 皆17~18歳位に見える。

 装備も初級か中級辺りの冒険者らしい、そこそこの装備で身を固めている。


 ロザベルがリーダー格の雰囲気を纏っている。

 ショートの明るい茶髪で快活そうだ、ロングソードを使う剣士らしく良い体格だ。


 ルグリットも同じ剣士だけど、ブロードソードを使うようだ。

 背中に槍も装備しているからランサーも兼ねてそうに見える。

 動きに支障がないようにグレーの髪を後で纏めている。


 アーチャーのデルハイケは緑色の服を着ているが、エルフじゃ無さそう。

 単なる弓手じゃなく、探索技能持ちらしい。

 いわゆるレンジャーかな。


 金髪の魔術師ヘルミーネは魔術書を持ち歩き、メイスと魔術杖を混ぜたような杖を持っている。

 あの杖は接近戦に使える武器なのかも。

 接近戦もこなすなら、体力の無い魔術師って訳じゃないって事か。

 魔術師は数多くの呪文詠唱が必要になるから、忘れないように魔術職には必要なのか。

 いや、閉じの部分に厚い金属が張ってあるから、魔法書も武器なのかも。

 フード付きのマントを羽織り、道具の多そうな鞄を肩から掛けている。


 一応剣士扱いの俺は、ミドルサイズの鉄剣を持っている。

 今は明かせないけど実は俺、剣良し、格闘良し、魔法良しのオールラウンドプレーヤーなんだ。

 但し曰く付きだけど。


「お姉さん達、タンク役がいないようだけど?」

「うん、出来れば盾持ちの丈夫なのが欲しいけどね」


 どうやら女性で盾持ちの丈夫なのは中々いないようだ。

 だから取敢えずは、数で囲む戦い方を主にしている様子。

 中級冒険者くらいになれば必要になって来るかもしれない。


「ラーデル君が仲間になったんだ、お互いの腕前を確認するためにも、一つクエストを受けようじゃないか」


 ロザベルの提案で依頼票の張られた壁を眺めに行く。


「五人に増えたんだから、格上の依頼を受けられるかなぁ」

「そうだねえ、チャレンジしてみるのも良いね」


 デルハイケの提案に皆はうなづいた。


「これなんかどう?」

「どれどれ」


 農場の畑をオークに荒らされているらしい。

 オーク退治のクエストで、報奨金は首一つに付き銀貨一枚。

 ノリッチ、つまりこの街の依頼のようだ。


「オーク退治かぁ」

「オークって集団で来るらしいよ」

「集団で来るとなると、軍団で迎え撃つような仕事だよね」


 さすがに冒険者五人だけじゃ荷が重い。


「これは?」


 森の魔獣退治依頼だ。

 森から出てくる野獣や魔獣を減らしたいという。

 報奨金は、野獣や魔獣と換金とだけ書いてある。

 ハンター御用達のクエストでもあるけど、初級から中級冒険者向きのクエストだ。

 まあ、冒険者ってどんな仕事でも請けるけど。


「常時出ているクエストだよね」

「無謀な事考えなきゃ、妥当な線かな」


 俺はポルダ村での経験があるから、これでも少し無謀気味な気がする。

 でも中級に上がろうと言うなら、受けた方が良いのかも。

 安全対策に心許ない世界だけど、何事もリスクが無い挑戦は有得ない。

 リスクを負いながらも、乗り越えてステージは一段上がる。


 とは言え、蛮勇や無謀は身を滅ぼす事になる。

 しかも命と引き換えとなれば、誰もが慎重にならざるを得ない。


「まあ、お互いの腕前を確認する様子見だから、それで良いでしょ」

「そうですね」

「うん、そうしよ」

「じゃあ、これで決まりね」


「ちょ、ちょい、俺の意見は聞かれないんか?」

「皆は君の実力を見たいからね」

「そう、新参者の宿命ね」


「みんな、傷薬の準備は良いね?」

「私は二つ有る、大丈夫だ」

「私もOK」

「私はヒーリングも使えますし」


 ……おお、魔術師はヒーラーも兼ねてるのか。


「俺も三つ持ってます」

「よし、決まりだ、行こう!」

「荷車を借りていかなくちゃいけないね」


 ロザベル達は馬屋で荷車を借りた。

 まだ馬まで借りる余裕は無さそうだ。

 森までそれほど遠くないから良いんだろうけど。

 で、荷車を引くのは新参者の俺の役目らしい。


 Mass-Crimsonの一行は街を出て森に向う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る