洲本くんの周りの変なヤツら。

RiNRM

1年 〜春〜

第1変 高校では普通の友達を

 校門の前に立ち、深呼吸をする。

 今日から俺も高校生だ。昨日は楽しみで眠れなかった。


県立海山高校けんりつみやまこうこう


 ここが今日から通う学校だ。普通の公立高校だが、中学校と比べたら何もかも全然違う。


 俺はここでの青春を送るんだ。


 クラス表を見るために靴箱に行く。その時、校門の方から女子の歓声が聞こえた。

 嫌な予感がする。俺は後ろを決して振り向かず、急いで靴箱に向かう。


「やぁ、裕」


 間に合わなかった。

 恐る恐る後ろを振り返ると、そこにはイケメンという言葉がぴったりな美男子がいた。俺が女子ならば、きっと一目惚れしていただろう。そんな顔だ。


 こいつの名前は『津久井つくい晴翔はると


 俺の幼馴染の一人だ。晴翔は物凄くイケメンだが、ポンコツなところが多い。また、痛いヤツなので痛い発言をよくする。顔はいいが中身が残念だ。


「僕は何て罪な男だろう。裕と同じ学校に通えるだけでも嬉しいのに、沢山の可愛い子猫ちゃんとも通えるんだから」


 女子はまた歓声をあげる。

 本当に痛いやつだ、あれの何が良いんだろうか? それよりもこいつがいるなら、あいつもいるはず。どこだ?


「俺と友達にならないか?」


 見渡すと、校門付近でこの学校の上級生らしき人が、言葉で表現することができない程の美少女に馴れ馴れしく話しかけていた。そんな彼女は男子生徒に近寄って、何かを呟く。すると男子生徒は膝から崩れ落ちた。

 彼女は黒く長い髪をかき上げ、俺の所に近づいてくる。


「久保……」

「おはようございます、裕様。これからもよろしくお願いします」


 彼女は『久保くぼ花織かおり


もう一人の俺の幼馴染だ。久保は才色兼備・頭脳明晰・スポーツ万能の完璧人間だ。それにお嬢様でもある。そんな久保は俺に対しての執着心が強いというか、何に対しても俺を一番に考えてくれる。嬉しいが、少し度が過ぎている。


 さっきの男子生徒になんて言ったのか、何となく分かる。一応、聞いてみるか。


「ああ……それより、さっき、あの人に何て言ったんだ?」

「さっきのお方にですか? えっと『貴方は一体、誰に対して口を聞いているのですか? 私と友達? ふざけないでください。友達になりたいのなら、裕様みたいになってから出直してきてください。まぁ、無理だと思いますけどね。それでは、まずは口臭を治してきてください』です。それがどうかしましたか?」

「いや……」


 恐ろしすぎる。こんなことを言われたら、俺だって膝から崩れ落ちるだろう。

 久保は美人だからか、よくナンパされる。そのため、馴れ馴れしい人が嫌いになっており、馴れ馴れしい人にはさっきの様にきつい言葉を放っている。


 分かってる人はもう分かってるかもしれないが、俺の周りには変なヤツが多い。産まれた頃から俺の周りにいるやつらは全員変なヤツだった。

 だから、俺はこの高校生活で普通の友達を作って、普通の学校生活を送るんだ!


「あっ、裕様と同じクラスです」

「裕、君とは運命の糸でつながれているようだ」


 ……終わった。俺の普通の高校生活。

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