ねぇ、池田くん
こしょうず
第1話 4年3組
「おい池田!ほらカマキリだぞー!」
本を読みながら眠っていた僕の耳に、吉本くんが池田くんをからかう声が入ってくる。
「吉本くんやめてよ…カマキリは…嫌だよぉ」
池田くんはか細い声で必死に抵抗するが、ゲラゲラ笑いながらカマキリを押し付けている吉本くん達の耳には、全く届いていないようだ。
不意に「ほぉら!」と吉本くんの合図とともに、吉本くんの手から空中に放たれたカマキリは、綺麗な放物線を描き池田くんの目の直ぐ横にあたり床にひっくり返った。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
池田くんはびっくりして椅子から転げ落ち、カマキリ同様床にひっくり返った。「バタン」と大きな音ともに吉本くん達の笑い声が大きくなる。
「ははは「うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」だってよ。普通カマキリにそんなにびびるかよ」
「あっはっは、これは最高だね」
吉本くん達の笑い声が教室に響き渡る。教室にいる誰もがやり過ぎだと思っているが、誰も注意しない。いや、注意できないと言ったほうが正しい。
吉本くんは気が強く野球をしていて筋肉質なので、誰も逆らえないのだ。おまけに女子のボス的存在に好かれてるため、正義感の強い女子も先生に告げ口できないでいる。
池田くんは涙目になり、教室を飛び出して行き「あっ、待て」と、つられて吉本くんも教室から飛び出して行った。「よっちゃんもう授業始まるよー」と吉本くんの取り巻き二人も教室を出て行った。
程なくして3時間目の始業のチャイムが鳴り担任の草岡先生が教室に入ってきた。
「はーい授業始めるぞ。あれ、吉本達は?どこ行った」
数秒空いて、学級委員の山田が「おいかっけっこして何処かに行きました」と投げやりに発言した。
「そうか、じゃあ仕方ないな。先に授業を始める」
みんな、何事もなっかったかのように教科書を開いて、ノートを取り始めた。吉本くんのことは、何も聞かれたくない。
クラス全員の共通認識であり、もしかしたら先生も何も聞きたくないのかもしれない。そう思わせるほど吉本くんの行動に無頓着なのだ。
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