災厄

鷹崎レオ

災厄 ―草乱―

ながあめに濡れた街並みが、強い日差しで一気に乾く。

好天が大地をも乾かし始め、街が活気づく頃、それは現れた。


遠くで聞こえ始めた地響きが、次第に近づいてくるのがわかる。

周りに悲鳴が上がり始める。程なくして大地が隆起し始めた。

大地は裂け、建物や森が根こそぎ刈り取られ、飛ばされていく。

家も…。学校も…。遊び場も…。


仲間たちが逃げ惑う。近くの高台に一緒に避難する。

その災厄が、我が家に差し掛かるのが見えた。

確か二階に母がいたはず。不安が過る。

次の瞬間、潰され落ちていく母の姿を目撃する。

兄弟たちも必死に飛ばされる家にしがみついていた。

――どうして、こんな。

仲間たちの家族も、引き裂かれ、潰され、大地に転がっている。


災厄が通り過ぎた後に広がった無残な光景に、方々で怨嗟の声が上がっていた。

更地にされた大地を見つめる。所々に建物の残骸があり、その陰に隠れ難を逃れた仲間たちが見えた。その中には長老の姿もあった。

長老に聞くとこれは、生涯に幾度か起こる災厄なのだという。

理不尽で無慈悲で無軌道な破壊。街や森が栄え始めると起こるのだという。

ちくしょう…。ちくしょう…。

そう呟きながら、また皆で営々と住処を作り始めた。



「あーあ、腰痛い。」

そう呟き、背筋を伸ばし周りを見渡す。大方作業は終了してきた。

「こいつらなんでこんなに伸びるの速いんだ。ちくしょう。」

益体もなく毒づく。

もうひと踏ん張り、とばかりに一つ荒く息を吐き、残りの区画の草を毟り始めた。

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災厄 鷹崎レオ @tk-leo

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