重魂乙女は破滅フラグを回避したい!

惜帝竜王と夢の盾

第1話 死にたくないって、言ってんでしょうがっ!

「イタタタタタタタタタタタタ!!!!」


 蛇が、毒々しい蛇が私の無い乳――もとい、美乳に噛みついているんですけど、どうなっていますの?


 噛まれた傷みか、精神的なショックだからか、いや、明らかに毒のせいであると思われる高熱が身体中に痛みを伴い駆け巡る。これまでの人生が脳裏に蘇る。蘇っちゃう。走馬燈か、これが走馬燈なんですか!?


 愛しいカエサル。

 敵国の女王の私を受け入れてくれた美丈夫って、顔がめっちゃ濃いよね、この人。


「ん?」


 漫画とか映画だともっと爽やかな感じだったのに、実際にはこの程度なのは仕方ないのかしら。というか、服のセンスと言うか、まあ、文明がショボすぎてガッカリ感しかないのだけれど。


 おかしい。記憶が変になっているのかしら。自分が自分ではない感覚が混じり込んでいる。そもそも、どうして蛇が私の荷物に紛れ込んでいるの?


 召使達がこのような杜撰な管理をするとは思えないのだけれど。

 まあ、ほぼあの子の仕業ね。本当に姉離れ出来ない幼い子。


 いやいや、アンタ達、血が濃くなりすぎだって。近親すぎる婚だってば。今時、動物でもこんな血が濃くないよ、マジで。


「はい?」


 ああー、思い出した!!


「「私は――」」


「クレオパトラ7世よね?」

「転生者だわ!」


 一つの口から、異なる言葉が紡がれると、交わった魂は溶けあい、そして天に召されたのであった。二人の想いはただ一つ。




 こんな最後は絶対に認められない!!








 馬鹿げた夢を見ていた気がする。

 私がクレオパトラになっていた夢だ。いくら空想好きの引きこもりのゲームオタクだからって、余りにもアホすぎる最後だったからだ。転生に気が付いたのが、毒蛇に噛まれて死にゆく瞬間だったとか間抜けにも程があるし、本当だったら悶絶級の馬鹿である。神様に電凸すべき案件である。神様がスマホ持ってるかどうか知らないけど。


「ああ、よく寝た。夢見は最悪だったけれど」


 私はせんべい布団のような貧相な掛け布団を掴み身体から外――って、え?

 私、ベットに寝てたよね?

 いやいや、結構貧乏な家だったけど、日本じゃ珍しくないサラリーマン家庭だったよね?

 寝てる間に誘拐された?


 私は混乱する中、どうにか起き上がるが、身に着けている物も何かおかしい感じがする。見たくないし認めたくもないけれど、確かめないといけない気がする。思い切って寝ぼけている目を見開いて自分の身体を凝視する。


「……マジですか……着物? ふぅぅぅっ」


 私は現実から逃避すべく、自ら意識を手放すことにした。



 転生、マジ転生、やってらんないわー。

 ゲームしたい。それが、意識を失う前の自分の素直な想いと願いだった。


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