第1話 ピクニック①
パンニング皿は砂金を取るための道具で皿というよりかボウルのような形をしています。側面は網目になっていて傾けると水と砂が零れ落ちます。
あまり大きく
私が掬い上げたパンニング皿には石粒があり、まずそれを摘まんで捨てます。そこに川の水を注ぎ、くるくると中の水を回すように揺らします。
土は水と混じって泥水となり側面の穴から流れます。
砂が減り、その中から金色に
そうそれが砂金です。
一回で獲られる砂金は少ないのですが積もれば砂金だって馬鹿にはなりません。
勿論、効率は悪いです。これを職業にはできません。あくまで砂金は
今日、私は母の仕事の手伝いで魔石採りに来ています。魔石は文字通り魔力を持った石のことです。その魔石は色々な条件で発生します。山、川、地面の中、もしくは地面に転がっていたりなど様々。
その中で私は川から生まれた魔石を採りに来たのです。山や地面はツルハシを使って掘ったり削ったりと力が必要なのです。だから私の様な子供は川岸から採ったり、森の中で転がっている魔石を拾い上げるのです。
そして私は今、川での魔石を採り終わり、小遣い稼ぎの砂金採りを行っているのです。
パンニング皿から掬い取った砂金を岸に置いた小瓶に入れます。小瓶には今日採れた砂金が貯まっています。
さて、あともう一回やりましょうか。
また川に戻り、川底をパンニング皿で掬おうとした時でした。
「ミウ、何してるの?」
振り向いたら岸に金髪の少女がいます。その子は友人のセイラです。
「私はお母さんの手伝いで魔石集め。そっちは?」
セイラはバスケットを少し掲げ上げ、
「薬草採り」
私は砂金採りを中断してセイラの下に向かいます。
「それは?」
セイラがパンニング皿を指して聞きます。
「これはパンニング皿。砂金を採る道具」
私は岸に置いている小瓶を取って、セイラの顔の前に掲げます。
セイラの髪と同じ色の小さな粒が陽の光を受けて輝いています。
「へえ、これが。少なくない?」
セイラは目を細めて瓶の中の砂金を見つめます。
「砂金だからね。一回で採れる量は少ないの」
そして私は瓶にコルク栓をしてバスケットに入れます。
小さな岩に座ってタオルで足を拭いて靴下、靴を履きます。
「もういいの?」
「うん。魔石も砂金も十分採ったし。セイラは薬草採り終わった?」
「うん」
「じゃあ、一緒に帰ろ」
◇ ◇ ◇
「ねえ、この後時間ある?」
帰路でセイラに尋ねられました。
「うん。あるよ」
「じゃあ、トーリの丘に行かない?」
「いいよ」
そして私達は一度帰った後、広場で待ち合わせすることにした。
◇ ◇ ◇
先に言っておきますが妖精だからといってみんながみんな森に住んでいるわけではありません。町に暮らす人をタウン派、村に暮らす人をヴィレッジ派、森に暮らす人をフォレスト派と言います。
こんなことを言うのだからタウン派かヴィレッジ派かと思われたでしょうが、私達家族はフォレスト派です。ちなみにセイラもです。
森に暮らすといっても森の中にポツンと家を建てて暮らしているのではありません。木を伐採して広い敷地を作り、そこに芝と庭、そして一軒家を建てているのです。
イメージとしては避暑地に建てた一軒家が近いでしょうか。
家に帰って私は母の工房にあるテーブルにバスケットを置きます。その母は工房にいて魔石を加工しています。
「魔石ここに置いとくよ」
私の言葉に母は仕事を中断して、こちらに近付きバスケットの中身を確認します。
「うん。ありがと」
私はバスケットから砂金の入った瓶を取り出した。
「砂金かい? どう貯まった?」
「まだ全然」
私の部屋にある砂金と合わせても金貨1枚もできません。
「この後、セイラとトーリの丘に遊びに行くから」
「そう。陽が暮れる前に帰ってくるようにね」
「わかってる」
私は工房を出て2階の自室に向かう。
自室で机の引き出しを開けて瓶を取り出します。そこに今までの貯めた砂金が詰まっています。私は今日採れた砂金を貯めた砂金の入った瓶に入れた。
「やっぱまだまだだよねー」
瓶を傾けて砂金の塊を見つめます。砂金は粒のものから小石のやうなもの、紙切れのようなものまで形は様々。
私は瓶を引き出しに戻して自室を出ます。
1階のリビングを通ろうとした時、母に呼び止められました。
「ミウ、これ持っていきなさい」
またバスケットを渡されます。
「お母さん、これ何?」
「サンドウィッチと水筒よ」
「ありがとう」
私はバスケットを受け取り、玄関へ。玄関棚からバドミントンのラケットと羽が入ったケースを取ります。
◇ ◇ ◇
広場には豚の像があり、よく待ち合わせの場として使われています。
本物そっくりの豚の彫像ではなくアニメ調のような形をしています。この像は祖母の代に置かれたものらしいです。
豚の像と向き合っているとセイラがやってきました。そのセイラは茶色いくせ毛のある少女の手を引いています。
「ネネカも来たの?」
「来たというか引っ張られてだよー」
緑色のくせ毛と間延びした声を出すこの子はネネカ。セイラとは家が近所で仲良し。
今日もたぶん家でごろごろしていたのを連れ出されたのだろう。
「それでどこに行くのさー」
「もう! トーリの丘って言ったでしょ」
セイラの言葉にネネカはそうだっけと首を傾げている。
「そのバスケットは?」
「うちのお母さんがサンドウィッチを作ってくれたの」
「私もお母さんがクッキーを」
セイラがバスケットを掲げます。
「それじゃあ、行こっか」
『うん』
先頭を私が。その後ろをセイラ。そしてそのセイラに手を握られネネカが続く。
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