第13話 それでも私は

 翌日、俺とユイは王様に呼び出された。

 メイドに連れられてある部屋の前に立つ。ドアが開けられる。

 そこは赤色の絨毯が敷いてあり、シャンデリアが光っている。

 メイドは外に出たまま、ドアを閉める。

 床よりも三段高い玉座に座っている。立っているとちょうど目線が同じくらいの高さになる。

 護衛も従者もいない。

 俺とユイと王様の三人だけ。

 これは、腹を割って話したいということだろう。


「勇者小鳥遊よ。率直に聞く。勇者としても勤めを果たすか否か」


 やはり、昨日の件だろう。

 虫が嫌で逃げ出した。

 ただそれだけ。

 だが、それだけなのが問題なのだ。

 ユイは苦虫をかみつぶしたような表情になる。

 多分、考えているのだろう。

 ここで拒否すれば明日からどう生きていけばいいのかわからない。

 でも、森にはいきたくない。

 虫責めというのはも王様に呼び出された。

 メイドに連れられてある部屋の前に立つ。ドアが開けられる。

 そこは赤色の絨毯が敷いてあり、シャンデリアが光っている。

 メイドは外に出たまま、ドアを閉める。

 床よりも三段高い玉座に座っている。立っているとちょうど目線が同じくらいの高さになる。

 護衛も従者もいない。

 俺とユイと王様の三人だけ。

 これは、腹を割って話したいということだろう。


「勇者小鳥遊よ。率直に聞く。勇者としても勤めを果たすか否か」


 やはり、昨日の件だろう。

 虫が嫌で逃げ出した。

 ただそれだけ。

 だが、それだけなのが問題なのだ。

 ユイは苦虫をかみつぶしたような表情になる。

 多分、考えているのだろう。

 ここで拒否すれば明日からどう生きていけばいいのかわからない。

 でも、森にはいきたくない。

 八方ふさがりである。


「なあ、お前が嫌なら…・・・」


 俺が口を開いた瞬間王様はそれを消し去るくらいの大きな声を出す。


「黙っていてくれないか、勇者那狼」


 俺はいら立ちを隠さずに言い返す。


「なんで!!」


 王様はそんな俺とは反対に落ち着いた口調で話す。


「勇者那狼の意見は聞いた。この王の前で勇者の務めを果たすと宣言したのだからな。だが、勇者小鳥遊の意志を私は一度も聞いていない。私は勇者小鳥遊の意志を知りたいのだ」


 それを言われると黙るしかなかった。

 確かに俺は王の前で宣言した。

 発言に責任なんて持っていなかったけれど。

 ユイは顔をゆがめている。

 足が少し震えている。

 怖いのだろう。

 この発言によって人生が決まる。

 一言。

 やるか、やらないか。

 だが、二択という逃げ場のない選択が余計にユイを追い詰める。

 第三の選択肢があればいいのに。

 気まずい空気が流れる。

 数分が数時間のように感じられる。


 無音。

 

 ユイはもう泣きそうだ。

 かわいそうじゃないか。

 女の子なんだぜ。

 俺だってかわいそうだけど。

 二度と会えないであろう家族のことをふいに思い出す。

 ユイだってそうだろう。

 いや、むしろユイのほうが親とは仲良かった。

 旅行とかいっぱい行ってたもんな。

 よくそれで学校休んでた。

 そんなことを考える。

 急にユイは動き出した。

 大きく息をして、こぶしを握り締める。

 覚悟ができたようだ。


「やります。私、やります」


 ユイの横顔がかっこよく見えた。涙目で情けないという人もいるかもしれないが、俺はこれに美を感じた。

 決意。

 それは大変なことだ。

 俺みたいに流れでホイホイ決めて、ふわふわしている人間とは違う。

 覚悟を持った目。

 それに見とれていた。


 

 

 

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