第9話 剣術講座

 次に剣術だ。

 先生はというと、ごっついオッサン。これが第一印象である。てかそれしかない。それにスキンヘッドで怖いに怖いをお重ね塗りしたような大人だ。

「君たちが勇者様か?」

 声がでかくて、二人tも委縮してしまう。

「あ、はい」

「がははは」

 何か面白いことでも言ったか?

「そんなに委縮しないでくれ」

 どうやら、勇者とか呼ばれているくせに、こんなオッサンごときに何委縮してんだっていうわらいだった。

 鏡を見ろ鏡を。

「俺はガンゼフだ。一応、この国一番だった騎士だ。今ではこうして教える立場になっている」

 どうやら、ヨーゼフと同じようだ。

 あの王様よくわかっている。現役で一番強い奴になんて教えられても非効率的だ。それなら、教育者としての地位があるものに教えさせるべきだ。できるからと言って教えられるどうかは別の話だ。名選手が名監督に必ずしもならない。

「ではとりあえず、私と勝負だな」

「えっ」

 二人とも驚きで声が漏れる。いきなり、勝負って。こんな怖いオッサンと戦わなくちゃいけないの?いやだよ。怖い。

「じゃあ、練習用の木刀を渡すから」

 西洋剣を模して造られた木の棒を渡される。いや、固いんですけど。

「よし、まず那狼ケイ。かかってこい」

 いやちょっと待って、これで殴られたら死ぬんですけど。たかが、棒っきれだと思っていたら大間違いだ。

「あの、防具とかは」

「ない」

 それだけかよもっと説明して来いよ!!

 ためらって突っ立っているとガンゼフが挑発してきた。

「どうした来ないのか?」

 ああ、もう、行ってやら。

 俺は剣を構える。左足を半歩だけ引く。そして、顎を少し引く。体をしっかりと正面に向け縁先はガンゼフの首を向いている。学校の授業で少しだけやったことがあるだけだ。どのときは素振りしかしなかったけど。

「ほう、変わった構えだな」

 すり足で徐々に近づいていく。

 ガンゼフは剣を構えた。俺と違って半身をきって剣を体に密着させている。俺からするとガンゼフの構えが変わっている。

 ピリピリとした緊張感が漂う。

 素人に様子の見愛なんてものは無用だ。

 一気に振りかぶって面を狙う。足に力を入れ

 速さ。それだけを意識して打つ。

 ガンゼフの表情は変わった。目を見開いて焦っているのが一瞬だけ見えた。

 カン

 木と木がぶつかった音が響く。

 かなり、惜しかったと思う。

 ガンゼフの息は少し荒い。

「まさか、そんな構えでこんなに速く打ってくるとは思はなかった」

 ガンゼフは感心しているようだ。

「正直、勇者というものを甘く見すぎていたらしい。すまない、小鳥遊ユイのほうは無しにしてくれ」

「あ、はい」

「すまないが、今日はここまでだ」

「えっ」

 ガンゼフはそのまま去っていく。

 どうやら本当にここまでのようだ。

 何もしてないんだけどな。

 

 

 

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